一、臨春
鋭き高峰に 月は懸かりて 数重(すうちょう)の山を照らし 月色 清し
雨は地上をぬらし 草花(そうか)は開きて 寂寂(せきせき)として 独悲に沈む 吾(われ)自らを愛す
月は肌雪(きせつ)を しらじらと照らし 誰ぞ 吾を知るなし
離騒の海南の村に 春柔らかにして 初初(ういうい)しき君ありて 吾 想いをはせる
春耕の時を臨みて 愉悦のなかに ただ松柏(しょうはく)の声を聞く
二、臨春
落下の季節 清暉(せいき)の中に 冬は迫りて 寒林の葉は 色を変えて落ちる
幾再か見る 別れし女(ひと)の 幸薄き夢 吾(わが)人生 行きつくして 晩年の日日(にちじつ)の 独悲の中に 迫りくる終えんの寂寞
冬はまたしずかに 地の果てまで広がりて 憂思の中に 臨春を望む 春天の樹(き) 清夜月の花草(かそう)
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