一、新しい春
釣鐘草の花が さびしくゆれていた 透明な風が 落ちかけの葉をふるわせていた 秋の日の寂しさは もう僕らを通り過ぎた イチョウの葉が小さくて かわいくてしかたがないと 少女の言っていた日にもどった
二、初夏
水草の白く群がる雨あがりに 明るい日射しは樹木を透いて 川原に青い陰をつくった 見たまえ そこには 水面の光と輪のたわむれのように 明るい少年たち 魚(うお)を釣る少年に 初夏の午後は 白い太陽ばかりだ
三、秋
通り雨のあとに 一人 とり残された 濡れた衣服もかわかないまま 黙って立っている 透明な風がにわかにかけぬけ イチョウの葉が はらはらと朽ち落ちている
四、冬
北風に鬼ごっこをして 小雪はちらちらと 地上をさまよいつづけ 冬木立(ふゆこだち) その下で待ちつづけた人生は もう、冷たさにかじかんでいる 夕方ともなれば閑散として 街灯のあかりに この白一色の地上は いよいよと虚しくなるばかり
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