VITA HOMOSEXUALIS
DiaryINDEX|past|future
ウリ専のボーイさんとは、一夜かぎりの体の快楽を楽しむもの。
彼がどんな人であるか、どこに住んで何をしているのか、根掘り葉掘り聞いたりしないのがマナーだ。
彼は聞かれても答えないし、答えたとしてもてきとうな作り話だ。
そう、わかってはいるのだが、熊本となると東京や大阪とは違い、世間話をすれば知っているところも共通するし、訪れたことのある場所もだいたい一致する。
私が単身赴任でこちらに来ていることや、福岡に愛人がいたことなど、ぽつぽつと寝物語に話すと、彼もぽつぽつと問わず語りに自分のことを語りだした。大学生でシステム設計を勉強していること、だからこの店のサイトも作らされていること、両親は別居していて、母親は少しアル中気味・・・これ以上言うと、熊本の店に行ったことのある人なら、彼が誰だかわかってしまうからやめておく。
でも、私は彼の話を嘘だとは思わなかった。作り話だとも思わなかった。そのときはなぜか、ありのままを信じたい気分になっていた。
浅黒いが髭の薄い彼のかお。白い歯、脇の下からかすかに漂う麝香のような汗の香り、フルマラソンを走るというだけあってもっこりと膨れ上がって硬い太もも。
薄暗い照明の下で、レゲエのような激しいリズムの音楽に身をゆだねながら彼の話を聞いていると、不思議に、心底から彼がいとおしいと思えるようになってきた。
私は次第に勃起し始めた。
そうして私は彼にささやいた。「ちょっと頼みがあると」
「なんですか?」 彼は素直にこちらを向いた。
「オレはすぐにイク。年ば取って体力の落ちてきたけん、しょがなか。イケば一回で終わる。ばってん、それだけではつまらんと」
私が使うのはニセの九州弁だが、とりすました標準語で話すよりは地元の人に受ける。
彼がまじめな顔で私を見つめる。
「キミにイッて欲しか・・・」
「射精ばしてくれんね・・・」
私は、ウリ専のボーイさんは、お客をイカせるが、自分からはイカないのだと信じていた。いろいろな客にそれをやっていたら体がもたないだろうし、客が興奮しても自分は興奮しない訓練を受けているはずだからだ。
しかし、彼はこくんとうなづいた。
私は彼を抱き寄せ、唇を吸った。
|