僕らが旅に出る理由
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今日は晴れたので、昼食後皇居濠に足を伸ばしてみた。
少し風が冷たい春先の皇居濠、よいです。
中東あたりの人らしき若いカップルが鯉にエサをやっていた。 若い人らしい、屈託のない笑顔だった。 なんとなく誘われて、私も鯉を覗き込んだ。
濁った水の下からぬぅっと姿を現す、大きな鯉。 この鯉一つにも、腹を立てていた頃があった。 気まぐれな人間からもらうパン屑を食べるだけ食べて、えんりょなく巨大化していく。なんて図々しいんだろう、と苛々していた。
当時、皇居濠には、淋しそうな人がよくやってきて、鯉を相手に時間を潰していた。 遠い冬の日、 「あれはキンクロハジロというのよ」 と水鳥の名前を教えてくれた見知らぬ女性も、今はもういない。
殺伐とした印象しかないのは季節のせいばかりでなく、私が追い詰められていたせいだろう。
10年くらい前の話だ。 ずいぶんたくさんの時間が流れた。 10年後、またこの日比谷界隈に舞い戻っているとは、予測もしていなかった。 結局、大して進化もしなかったのだろう。
まぁでも、鯉はやっぱりまずそうだな。
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