僕らが旅に出る理由
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2007年04月01日(日) 春愁

今日でお茶のお稽古が終わった。
ちょうど1年。

先生は80歳すぎの、笑い方が少女のように可愛い(という言い方も失礼だけど)おばあちゃん先生だった。
あまり格式張らず、お菓子におせんべいとかクッキーが出てくることもあり、どっちかというと本当にお茶が好きで、楽しんで頂きましょうという感じの先生だった。
だからお免状を取るように勧められたこともないし、いつも、季節の話題などしながらのんびりと2時間のお稽古をこなした。

その先生の娘さんにあたる人が私の母に、私がお稽古に通いだしてから先生が生き生きしてきた、と言ったそうだ。
その先生のところに新しい生徒さんが来たのは久しぶりのことで、一から指導することが楽しかったみたいだ。
私は私でお茶が面白かったので、用事があるとき以外は毎週通っていた。
だから、辞めると言ったときには先生は残念そうだった。私に直接は言われなかったが、娘さんには残念だと繰り返し言われたそうだ。

つい最近も、古い生徒さんの紹介で新しい人が見学に来た。
でも先生は、
「あたしはもう、いつどうなるかも分からない年だから」
と言って、あまり熱心に誘われなかった。

最後のお稽古も、淡々とすすんで、おしまいになった。
最後に挨拶をしたときに、先生はいつもの笑顔で
「お出会いできてよかったわ」
と言われ、
「お幸せに」
と、静かな声で言われた。

玄関の戸をしめて、自分の車に乗り込んで、窓越しに周りの山々の風景を見た。春はもう来ているようで、まだ何かを考えているかのように押し黙っている。
泣いてしまいそうだったので、すぐにエンジンを入れた。


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