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■ 無題2-8
「なに、なに見てんのシュウちゃん」
幾分高めのそれが、すぐ近くで騒ぎ出した。 それから俺の手元を見て、
「なにそれ、パチケじゃんっ」
一足遅れで帰って来たトーヤが俺に寄りかかるようにして、聞いてもないのに人の耳元で喚く。
煩い。しかも話し方からして馬鹿過ぎる。何だパチケって。何でも略すな。高校入学時に少しの間だけ黒くなっていた頭は――とは言っても二日で赤くなっていたが――今は金に近い色と茶色で染められている。
「トーヤ、帰ったらただいまぐらい言いなさい」
振り返らずにハル兄がそう言った。
二つという微妙な年の差のせいか、この一番下の弟をハル兄達のように温かい目で見守ってやる余裕が昔から俺にはなかった。
特に仲も良くなかったわりには、後ろから付いて来た記憶はある。しかし、遊んでやったような覚えはない。
馬鹿な子程可愛いと言うが、馬鹿はただの馬鹿でそれ以上でも以下でもない。出来れば一生関わりたくない人種だが、兄弟となればそういうわけにも行かないのが頭痛の種だったりする。
「それさぁシュウちゃん、誰とい――」 「うるせえ」
まだなんだかんだと話し続けようとする馬鹿を無視して、三階の自分の部屋へと上がった。
背後からハル兄の笑い声がして、トーヤの喚き声がする。何を喚いてんだあの馬鹿、と胸の中でなじる。
扉を閉めれば、苛立った気持ちも落ち着いた。落とした視線が少しシワになったチケットを捉える。週末は三連休。さらに混むだろう。そう思うと、余計に行く気はなくなった。
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すみません、更新できてませんでした…。
2008年01月07日(月)
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