|
|
■■■
■■
■ 無題2-5
変に優しくしないで欲しい。泣いてしまうのは、悲しいからで。でも優しくして欲しいと願う、あたしもいて。矛盾してるかもしれないけど、離れたいけど離れたくない。それはどちらも切実で偽りない、気持ちだった。
「マヒロ」
何度目かの呼び声。昨日に引き続いて泣き止まない、あたし。重いと思うし、ぐだぐだしていて鬱陶しいと思う。こんなふうになりたくないのに、シュウスケの前ではいつだって、強がれない。
それは昔から知られているということもあるだろうけど、やっぱり心の中ではずっと頼り切っているせいだって、本当はちゃんとわかってる。一番甘えてるからだって、ちゃんと知ってる。
「顔、上げろ」 「…無理」 「いーから」 「よく、ない」
ただでさえ寝起きの状態を見られて落ち込んでたって言うのに、さらに泣き腫らせば見せれるような顔になっていないことぐらい、鏡を見なくてもわかる。
「いいから」 「…や、」
両の掌であたしの頬を押さえ、ぐい、と上げさせられる。「…っ」すぐ間近に、覗き込むシュウスケの顔があった。
「酷い顔してんな、お前」 「誰のせ…、」
口元を緩めて、シュウスケが笑う。
「俺だよな、ごめん、わかってる。泣かせたくて来たんじゃないから。だから泣くなって。お前、明日も顔戻らなくなるぞ」 「シュウ、スケが…、泣かせてんじゃん…っ」
こんなんじゃ明日だって、学校に行けない。諦めきれない想いは、ぐるぐるとずっと駆け巡るままだ。見ていられなくて、目を伏せた。小さく、溜息が聞こえる。困らせてる。わかってる。想ったからと言って、叶うものじゃないことくらい。
好きだから、相手にも好きになって欲しいっていうのは、傲慢だけど本音だ。
好きな人の気持ちを尊重できないのは、本当に好きじゃないからだって何かの本で読んだ。それはとても正しいかもしれないけど、それは綺麗事だと思う。
自分が好きなら、相手にも好きになって欲しい。少なくとも、あたしは。
何を言いたいのか、考える前に、視線を上げた。「シュウ…、」でも、言葉は続かなかった。
「明日は」 「明日は、ちゃんと…行く。だい、じょうぶ」
シュウスケの言葉を遮って伝え、涙を拭う。
わかってる。困らせることは、引き止めることと違う。想いを伝えることとは違う。 それくらい、わかってる。
あたしは自分にそう言い聞かせた。
2007年12月26日(水)
|
|
|