舌の色はピンク
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晴れ。やや暑い。 今週は天気が悪そうだ。 朝もはよから洗濯をした。
電車内で目の前に座ってる優男が 装着しているウレタンマスクをずーっと触ってて気持ち悪かった。 位置がしっくりこないのか延々調整している。 3秒くらいウジウジいじったら、10秒と間を開けずまたウジウジと…。 なんだこいつ…。 身体的事由にも思えず、 単に身だしなみの一環と手癖みたいな感じで触り続けてから 嫌悪感がとめどなかった。 その手で絶対何にも触れるなよと思った。
出勤前に郵便局へ立ち寄り郵便物転送の手続きをした。 印鑑を押す項目があり、確認してみるとサインで構わないとのこと。 何もかもサインで間に合うようになってくれたらいい。 あと印鑑がない場合は、って、書いておいてほしい。
今日は弁当作ってない。 引越しを前に妻が近所の蕎麦屋に行っておきたいとねだり、 ちょうど在宅の日取りであったので今日行かせることにした。 僕は中華で済ませた。 普段より安めの、500円の餃子定食。 ご飯はなんか山盛りにされたけれど、残した。
夕飯はカレー。2日目のカレー。
昨日書き上げた小品、ここに残しておく。
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『ラブレター』
冬枯れにひさぐ街の隙間に小ぶりの椿がそっと艶を供えている姿を見かけ、愛おしい季節の到来に感じ入っております。 大椿という伝説上の巨木をご存知でしょうか。『荘子』に語られているこの木は、八千年を春とし、八千年を秋とし、三万二千年が人間の一年にあたるそうです。人間の生命の尺度をはるかに凌駕するこの大椿が花を咲かせた姿などめったに立ち会えるものではありません。そこから、珍しい出来事を椿事と言いならわすようになったそうです。
こうして私からお手紙を差し上げる椿事、さぞや不思議がられておられることでしょう。 私が貴女を見初めてから早二年の月日が経ちました。その間に私もつい、年を重ねてしまったようです。気を張ってさえいればいつまでも若くいられたものを、貴女を見初めた瞬間に、あの気もその気も緩んでしまい、どうやら私は、時が進めばそれだけ老いる、尋常の人間になってしまった。恋は人を狂わせるかのような噂ばかり聞きますが、とんでもない。恋は人を尋常にします。尋常になり果てた私は手紙だって書きます。まだ書いているさなかですから送り届けまではしていませんが、書き上げ次第、どうしたことか、送り届けもするでしょう。 これはラブレターです。渾身のラブレターです。ところどころラブレターの領分をはみ出しているよう見受けられるやもしれません。なにしろ、およそ人さまへと充てた書面になしうる意味合いのことごとくをこの手紙に表してみようというのです。私の全生命を込めてしたためているのですから、そのくらいの挑戦はさせてやってください。 人生のすべてを賭けて、貴女に私の恋を伝えてみたいと、この野暮天は勇み立っているのです。
さて、貴女はきっと、この黒々ときらめくインクのよく染みた世にも美しい手紙を手に取るやいなや、その重み、玄妙さ、神々しさ、ただごとでなさにハッとして、片手間にとりかかるはずであったつまらない雑事を片付けてから、ただこれだけに集中して、それは謹厳実直に、入学したての諸学生のような面持ちで、じっくり文面をお読みになってくださっていることでしょう。そのスバラしい気合をいったんほどいてもらいます。目を瞑り、なるべく時間をかけて…いえ、遠慮はいらない、この世の時間を止めるような深呼吸をしてください。そうして目を開けたらすぐ、右手を御覧ください。右手というのは、右腕の先っぽにくっついてる割れた塊ではなく、いま貴女のいる空間の右側という意味です。そこから上へ視線をそっと、…誰にもばれないようひそやかに、ゆっくりゆっくり、そっと流してみてください。いかがですか。いえ、そこに何があるか、何が見えたかなど知ったことではありません。私は時間のおぼつかなさ、空間のたよりなさを体感してもらいたかったに過ぎない。いかがでしたか。恐怖しましたか。その恐怖の実感を覚えていてください。その恐怖の裏にひそむ秘密こそ、私がこの二年間大事にしてきた××なのです。この××については、まだ名付けられてはいませんが、この手紙を読み終わる頃には、貴女が至適の名をあてがってくれるものと期待しています。 ところで…これだけは了解していただきたいのです。私は貴女に恋しております、が…くれぐれも、その恋を理解しようなどとは、ましてや理解し得るなどとは、自惚れないことです。私の恋は、言うなれば衛星のようなもので、惑星の都合におもねらず、ただ勝手にまわっているのです。つかず離れず、ただ勝手にまわっているのです。月は地球に懸想しているでしょうか。まさか、恋い慕っていないはずはない。月は気まぐれに地球上に降り立ち、気ままに走り、転び、その地表をなでまわし、ねぶり、その海面にたゆたっては、しゃぶりつくします。ところが、果たして地球の方は月をどれだけ知悉していることでしょうか。なぜ月が自分の周りをまわり続けているのやら、まったく地球は預かり知らないのです。 人類に達成しうる恋愛とはおおよそそのような構造にあります。 地球は衛星を一つだけしか配偶しませんが、火星には二つ、木星や土星にいたってはおよそ八十もの衛星をはべらせているようです。おさかんなことだ。私も負けていられません。
ご存じの通り、私には七人の恋人と五人の妻、十七の愛人、そして三人の運命の女がいます。 彼女たちは総じて嫉妬深く、且つは物分りがよく、私の口先のいちいちに深く頷きながら、まったく私のことなどどうでもよい、路傍の石に過ぎないかのごとき袖にする、思わせぶりな素振りを見せて、そのくせいつ何時も、どうにか私の気を惹けないものか、昼も夜もなく隙をうかがっています。貴女はもしかすると、彼女たち全員の素性はご存じないかもしれませんね。三十二人の恐るべき女たち…。よくも集めに集めたものをと、アッパレな所業に我ながら感心します。雨を怖がる女。彩度の薄い女。足音を使って笑う女。橋を渡りたがらない女。竜舌蘭しか食べない女。まぶたを鳴らさずにはいられない女。狸の親子を飼う女。天狗を知る女。足先を尻尾に見立てている女。嫌がらせ代行を生業とする女。視界に気に食わない色を見出しては自前の塗料で塗り替える女…。このあたりにしておきましょう。こんなあげつらいをしてみたところで紹介にはなりませんし、ましてや、うっかり、貴女への礼を失しかねない。要点を絞ります。彼女たちには疑い得ない、確固とした、共通の性情があります。もれなく全員が、心から私を愛しているのです。そしてまた、もれなく全員を、私は愛しております。ですが困ったことに、長らく私は恋を知りませんでした。よくある話です。私はその人間ばなれした愛の深さと大きさで、昼間には山林を弾みながらくぐり抜ける清風のように、夜中には星々を飛沫で撃ち落とす荒波のように、ときに強く、ときに寂しく、一人一人の胸中に巣食いました。ところが誰にどんな愛を試みようとも、恋の熱線が私をつらぬきはしなかったのです。 私の恋は貴女だけに実現しました。 他の誰でもなく、私は貴女だけに恋しています。 他の女を愛しながら、抱きながら、口説きながら、噛み、頬張り、味わいながら、私はなお、貴女一人にだけ、とろけるような恋物語を捧げたい。
ただ、彼女たちは揃いも揃って聡明ですから、私の恋心の不在はきっと、とうの昔から気取られていたことでしょう。また私は私で、人心の機微に敏いところがあり、それだけに、私のうわべの恋心の不在は感知されようとも、その奥底に芽吹いたばかりの恋心の真相だけは必ず隠し通してみせると、この二年間苦心したものです。 思えば二年前はまだ呑気していました。私も尋常ではなかった時分ですし、彼女たち全員を相手どってなお、ほとんど等分の愛を分配しているつもりでいました。ですが、相対と絶対、主観と客観、惑星と衛星といった二項には必ず認識のズレが生じるもので、彼女たちからすれば、平等な愛を実感できた日などなかったのでしょう。とはいえ何度彼女たちとの日々をやり直したとしても、結局私は同じように彼女たちを平等に愛したつもりになって、そうしてあの日、愛人の一人が言い放った言葉に、何度でも辿り着くのです。 「他の連中はいい。でも、恋人面してる女たちは許せない」 とうとう漏れてしまった一言でした。妬気が口に出された事実だけが大事なのであって、意味内容の充満している言葉には思えませんでしたが、周囲の女たちからは、そうだそうだ、とハ長調の声が上がりました。その場に居合わせた私は黙っていました。正直にいいます。怖かったのです。決して私に意見など求めてくれるなと祈るばかりで、ただ黙って、事勿れよろしくジッと俯いてしました。 愛人の一人に泥棒師がいます。 泥棒の業界とは不思議なもので、一流の腕があるからといって、有名にはなりえません。馬鹿らしいほど当たり前の話ですが、お縄となった者から名が知られていきます。達人ほど無名であるわけです。一方で、どの世界でもそういうものですが、その道を究めれば究めるほど、独自の術、技、癖が発展していきます。すなわち、素性が暴かれないながらも、その手口から、あぁあの泥棒かと同定されていくのです。彼女は一度どこぞの泥棒に入られた家ばかりをねらって盗みを働いていました。一度泥棒に入られた家というのは、それまでと生活様式が一変してしまいます。防犯設備の手入れ、貴重品の隠し場所、金庫の種類、扉の留め具の調子、鍵周りの埃の具合、家具の配置、動線に由来するトータルデザイン…。かつてどのような泥棒がどのように侵入しどのような犯行に及んだかは、以後の生活静態および生活動態へ、確実に反映されます。彼女にはその有様を鑑賞する趣味がありました。どの世界でもそういうものですが、その道を究めれば、成果物から声が聞こえるようになるものです。刀鍛冶はよその刀鍛冶が手掛けた刀一振りを見れば、その刃紋がいかなる哲学に裏付けられて焼き入れされたものか、即座に感得するものです。これはプログラマーがソースコードを見ても、パティシエがケーキを見ても、教育者が家庭の子供を見ても、同じことです。当の彼女も泥棒としては一流ですから、以前その家に入った泥棒がどのような判断を犯行中に下していったか、すっかり整えられ直された部屋からですら、手に取るようにわかるのでした。彼女はそうした部屋で顔も素性も知らぬ仲間の声を聞くのが好きでした。そして対話するように、あたかも平安貴族が恋の歌に返歌するように、自らの泥棒術を披露してきました。 話を戻します。恐るべき女たちから私の恋人を除く二十五人が、私の恋人七人に害をなそうという企てを立て始めたのは、まだ藪椿も花を咲かせない冬のはじまり、二年とちょっとばかし前のことでしたね。妻の一人に、時代が時代なら一端のフィクサーにも化けたであろう興行師がいます。この女の手練手管で、ふだんバラバラに生活していた恋人七人はひとところに集められました。二十五人は襲撃の準備を整えて、街の寝静まった静かな夜、目的地へと向かいました。 知っての通り私は古今東西の双眼鏡集めだけが趣味のつまらない男です。収集癖にもいろいろありますが、私は積極的に実用していくタイプで、独学ながら超望遠の技術もありました。その夜、私はまるで狙撃手さながら、彼女たちの動向を観測するに最適の立地を選定し、人払いしおおせたビルの屋上に陣取って、とっておきの双眼鏡を構えていました。白状します。とても、わくわくしていました。しかしそれ以上に二十五人の足取りは弾んでいて、双眼鏡越しの狭い視界のどこを眺めてみても、文字通り浮足立つ調子なのです。ある妻は足音で笑い、ある愛人はまぶたで音頭をつづみます。ある運命の女は不意の小雨を怖がって、橋の下に駆け込みました。その姿を見たある愛人は、橋の上を渡らず済んで嬉しかったのでしょう、ぱたぱた走り寄って、そのまま川を渡っていきました。川渡りに続くべきか二十四人が戸惑っている間隙を縫って、ある妻のふところから飛び出した狸がそれを追っていきまいた。砂れきと土くれの合間に置き捨てられた鉢植えが倒れ、暗闇に横たわる緑を竜舌蘭と見紛ったある愛人が這いつくばり、ためらわず葉をもぎとりました。すぐ横では、ある妻が鈍色の橋脚をそれとほとんど変わりない色味で勢いよく塗りたくり、あたりへ飛び跳ねる塗料のしぶきを余さず浴びようとするある運命の女の手足の敏捷は異界の踊りめいて、ますます彩度を低めていました。ある愛人が天狗を呼ぶための笛を短く鳴らしてみせると、停滞しかかっていた一同は感電したように大きく飛び跳ねて、着地したそばから溌らつと駆け抜けていきました。出遅れたものたちは手を取り合って、あわてずのんびり歩いていきました。のんびりでもやはり弾んだ足取りでした。 どう見ても、ピクニックか遠足にでも繰り出しているありさまなのです。 この襲撃は失敗すると私は見通しました。実際、あえなく失敗しました。彼女たちのあまりに明るい調子もさることながら、まったく、準備が不足していたのです。遅刻しないこと、忘れ物しないこと、こまめな点検をこころがけること…優等生になるためとばかり思われていた能力は、あろうことか、凶行の計画にも不可欠なのでした。これは盲点でした。二十五人と七人はこのあまりにもお生憎な始末に大笑いして、肩を組み写真を撮って、歌い、踊り、いきおいパーティーへとしゃれこみ、飲み、食べ、眠くなったものから眠り、目が覚めたものから起き、延々おおいに乱痴気を楽しんで、誰も宴を終えようとはしませんでした。
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例によってenpitsuは文字数制限が厳しいから 後半は明日のっける。
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