舌の色はピンク
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| 2014年11月15日(土) |
どくぼうがお好きでしょ |
うべなるかな、男子なれば誰しも一度は独房生活を夢見よう。 あるいは女子とても一致の憧れやもしれぬ。しかして当方たるは人間の端くれ、両の性は経ておらぬ。壮語戒め畢竟男子の夢について語るものである。
ところでこの時代この国家においては社会構造の基盤これすなわち資本主義である。乱暴にいって、需要と供給の仕組みを歯車に機能する運転装置である。 あるところに需要のやつが立っている。するとやにわに四方八方から供給どもが電光石火、大挙押し寄せ組んず解れつ揉みくちゃにする。息も絶えだえ瀕するまでは掴んで離さぬ有様である。これぞ諸君ら多勢が愛してやまぬ厚顔ふてぶてしき了解にして、かつは少数の諸君が覆すに能わず定着しきりせしめた不文律である。普く諸活動の前提である。条件である。全人圧倒の摂理である。 さればだ諸君! 独房生活への希求についてはすでに述べた。未だめくらまされるはその応答である。 あぁ、応答せよ! 楽器楽譜楽人が揃っていてだ。ただそれだけで兆されてあろう、奏でられるが定めとは。その音楽は呼吸に等しく無為自然の現象と呼ぶに当方いささかの躊躇いももたぬ。応答せよ! りんごは地に落ちて己が規範を世に示すのだ。
……独房生活への希求、否、訴求をだ……この社会は回収せねばならぬ…… 無論個人が軽率には実現しうる。例のいたる所業から縒って手繰って、然るべき裁きを拝受して。しかして体制に背を向けては夢見が悪い。夢見心地がための夢である。履き違えては男子の名折れ、見るも見下げためしいとなりし哀れさよ。 どうやらようやく霞が晴れてきた。暗雲退け希望の月明かりに照らされて、今ここに威風堂々供給の影がたちあがってくる。
すなわちビジネスモデルを組む。いわば経営型独房宿泊施設を構えてもらう。相思相愛、求める立場に答える力場。いわんや逢瀬場、穏便で円満で、念願成就の落としどころに相応しい。ほっ、とする。「きみは去れ。ぼくは住む」どこやらか号令が聞こえてきやしないか。
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独房ホテルがあったらいいと思うんです。 1泊や2泊なら泊まってみたいという人たくさんいる気がする。 受付でチェックシート渡されて、 看守の厳しさとか食事をこれだけ質素にとか、 ベッドのかたさだとか選べる仕様。 ただし初回はぬるい環境しか選べない。 通いつめてポイント貯めてゴールド会員にもなれば 本物さながらのサービス(厳しさ)を堪能できるという。
あまりに辛くなったら「リタイアでーす!」と叫べばいい。 すぐさま手厚く介抱され、懐抱され、解放してくれる。 ただし周りの宿泊客は陰険な笑い声あげるだろうし、 しゃれにならないほど舐められて、 もう次回の来店が見込めないほど傷つけられるリスクもある。
適性さえあれば1ヵ月コースをふんぱつしてもいいだろう。 模範囚と認められたら5000円のキャッシュバックもつく。 これを達成できるか否か、プラチナ会員への分かれ道だ。 プラチナ会員ともなれば、これはもう、ヤバイ。 拘禁。 猿轡嵌められてブロンズ会員の洋式便所の下水溝に放置される。 食事は下水に浸される。 猿轡には2cmほど隙間が設けられていて、そこからすするしかない。 しかも狭い。 構内は広いけれども配管が邪魔して体を動かすだけの空間がない。 そして寒い。臭い。不衛生だ。まともな人間なら1日で廃人になる。 とはいえそこはプラチナ会員。これぐらいじゃ音は上げません。 期日迎えたら笑顔でシャバに帰り、風呂に浸かって飯食って、幸福噛み締め、 明日からまた始まるサラリーマン生活への活力とするのです。
もちろん懸念もあって、いちばん怖いのが 客もいくところまでいっちゃうと 本物の独房、刑務所暮らしへの興味が高まるだろうから、 彼らが実際の犯罪に手を染めないかということ。 それで刑務所に送られてね。 「なんだ、ぬるいもんだ! これじゃせいぜいあの店のシルバー会員コース程度じゃないか。 ふん、飯もきちんと出るし、醍醐味がなくっていけない」 っつって。 でも3日4日経った頃に思い始めるわけだ。 ……これ、ずっと、ずぅーっと続くのか…… 半狂乱になってね。 とうとう叫び始める。 「リタイアです! リタイアー! リーターイーアでーす!」 なぜだろう隣人の笑い声すら聞こえない。 耳に入るは誰かの泣き声ばかりです。
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