舌の色はピンク
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2007年04月29日(日) Sデレラ

むかしむかしあるところに、
とても美しい娘がいました。
娘には意地悪な義理の母と姉がいました。
来る日も来る日も継母たちにいじめられる毎日。
灰がかぶる姿を嘲って、家族は娘をシンデレラと呼んでいました。

しかしシンデレラはドMでした。
「ああッ!お義母様いっぱい私をなぶって!
お義姉様もっと私をなじって!
そして踏んで!」
シンデレラは理想の家族に囲まれ、
充実した毎日を幸せに過ごしていました。

ある朝、シンデレラがいつものように継母の命令に従い
さるぐつわをはめながら庭掃除をしていると、
姉が血相を変えて走って来、
シンデレラに強烈なジャンピングニーをかましました。
「ほうひまひは、おひょうはま」
「舞踏会があるのよ。なんでも王子様が参加なさるんですって!」
それが何故自分にジャンピングニーを
かます理由になるのかはわからないけども、
痛みが快感にうつりゆくにつれ
恍惚の笑みを浮かべるシンデレラでした。
「はひ」
「噂によると王子様はドMらしいのよ。ちょうどアンタみたいにね。
この変態。
だからね、アンタみたいな醜い雌豚に首輪をして登場すれば、
王子様に対して女王様の器をアピールできるでしょう?
ウフフどうかしら。完璧な計画でなくて?」
「おひょうはま、へんはい!」
「誰が変態よ! 役立たずの淫乱奴隷ふぜいが!」
本当はお嬢様天才と褒め称えたのですが、
さるぐつわのおかげで
一つ罵倒をいただけたので
相変わらずシンデレラはご満悦です。

さて、舞踏会当日がやってきました。
姉たちはシンデレラを放置して
先にお城へ向かってしまいました。
この放置を乗り越えなければ
女王の奴隷に認めてもらえない、
一種の試練とシンデレラは捉えましたが
ぜんたいどうすればいいのかわかりません。
くたびれて町を歩いていると
黒い衣装をまとったおばあさんがいました。
「アラどうしたい、今夜は舞踏会だっていうのに小汚い格好をして」
シンデレラは、小汚いというフレーズにうっとりしながらも
おばあさんに事情を話しました。
「よおくわかったよ。
お前がかぼちゃとトカゲとネズミさえ用意すれば、
あとはあたしが何とかしてやろう」
ネズミは私でいいですかとシンデレラは言いかけましたが
シャレにならないので素直に集めました。

おばあさんがブツブツ呪文を唱えると、
かぼちゃは変形して木馬に、
ネズミは皮を剥がれ縄に、
トカゲは口から火を吐く即席ロウソクになりました。
おまけにきらびやかなドレスまで貰っています。
「まぁ素敵。これでどんなプレイもばっちりだわ」
「ただし12時までだからね。
これだけに気をつけて、楽しんでおいで」
「待って、おばあさま。
せっかくですからもう一つ魔法をいただけないかしら」
「聞こうじゃないか」
「私、今夜はすごくドキドキしていて…。
このままでは粗相して、
お姉様たちに迷惑をかけてしまいそうですの。
舞踏会の前にこの被虐願望を……どうにか満たしていただけないかしら」
「満たすというと…」
「私に辛い仕打ちをしてくだされば本望ですわ」
「本当にいいのかい」
「どうぞ」
「でも、大変なことになるよ」
「ぜひ、大変なことにしていただきたいのです」
ブツブツ……


「まあ!あの綺麗なお嬢様はどなた?」
「美しい……」
「なんと華麗な」
舞踏会に遅れること1時間、シンデレラがお城に到着すると、
これまで静かに踊っていた貴族たちがざわつきました。
「シンデレラ!?アナタ遅いじゃないの、それにどうしたの似合わないドレスなんて着て」
怪訝そうに戸惑う姉を、シンデレラははねのけました。
「邪魔ですことよ、お義姉様。いいえ、貴女なんて岩ね。
その汚い肌も、重い体も、邪魔なだけの存在も、岩と呼ぶにふさわしいわ」
「なっ……!シンデレラ、あなた!」
「Sデレラとお呼び!」

なんとシンデレラは、
自ら望んだ魔法によって
被虐の嗜好を取り除かれてしまったのでした。
元々のM心を満たすには、たしかに酷な仕打ちです。
それどころかいまやシンデレラは
強力過ぎた魔法によりドSにまで成り上がっているのでした。
「王子はどこなのよ」
「あ、ぼ、ぼくです…」
「アナタが王子? ふん、くっさいわね!」
「あぁっ!」

持参してきた器具も効を発揮し、
王子はすっかりシンデレラの虜になりました。
しかし、気づけば時刻は12時を迎えようとしています。
「次に会うときまで私の足、指、靴の味を覚えておきなさいよ」
シンデレラは急いで城を去りました。
片方の靴がなくなっていることに気づいたのは家に帰ってからでした。

魔法の解けたシンデレラは姉にこっぴどく叱られました。
いつもならありがたく頂戴する罵りも、
どうしてかあの夜から心地良くありません。
痛みに喘ぐ王子の顔が忘れられないのでした。

数日して、王子は舞踏会で出逢った女王様を
ガラスの靴だけをたよりに探す催しを企てました。
関係ない女性ばかりが集い、
たまに靴のサイズが合ってしまえば狂喜の沙汰ですが、
さすがに王子もそれだけでは認めません。
「あぁ、ぼくの女王様はどこにいるのだ。早く出てきておくれ」
シンデレラは久しぶりに王子の顔を見て、体のうずきを感じました。
彼女はとうとう我慢しきれず野次馬から飛び出し
ガラスの靴を履きました。

「アッ、貴女は…」
「ふん、相変わらずくっさいわね」
「女王様ァー!」

「私の靴をお舐め!」


シンデレラ(Cinderella)とは
フランス語で灰かぶり(Cendrillon)という意味です。
長らくSとMとを潜在させる灰色――グレー状態にあった彼女は、
いま誰にも頼らずようやく本来の自分を見つけたのでした。
もはや誰にもシンデレラとは呼ばせません。
彼女はりっぱな女王様です。

地位、権威、そしてアイデンティティーを確立させた二人。
王子と女王さまは
いつまでもいつまでも幸せに暮らしました。


Sデレラ  おしまい


れどれ |MAIL