舌の色はピンク
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2007年01月27日(土) 会話

 「私の面接に時間を割くなんてよほどヒマなんですね」
「キミも私の面接に来るなんてヒマなんだな」
 「私は就職活動の一環として企業への面接に時間を割くことに人生上の意義を見出しています。また、目下の行動指標でもありますからね。あなたは仕事があるんじゃないですか?」
「仕事なんてヒマつぶしだ」
「お前がヒマだ」
「ヒマをつぶす。お前を潰す」
 「古代ギリシャの史例を挙げれば、奴隷制度が生じたことから一般市民に暇が与えられ、哲学が発生されたといわれています。閑暇を意味するギリシャ語スコレーはスクールの語源でもあります。暇を一概に害悪とみなすのはいかがなものかと思いますが?」
「ここは日本だ」
 「すいません」
 「しかし文明開化を契機に、西洋の慣習、様式を取り入れることによって日本が近代化したのは事実です」
「ヒマに日本も西洋もない」
 「先ほどの発言と食い違っていませんか?」
「いや?」
 「すいません」
 「ここは日本だ、という言葉に、日本と諸外国を同様に見なすなという抗弁が含まれていると浅薄な認識をしてしまいました」
「そうか、気をつけろ」
「ここは日本だ。という言葉にはここは日本だという意味しか含まれていない」
 「なるほど、情報の告知ですか。ありがとうございます。ここが日本だということがよくわかりました」
 「私はれどれです」
「そうか」
 「今は面接中です」
「そうか」

 「人生を左右する就職に際しての面接を私は軽視してはいません。私は面接される身でありながら、また同時に御社を見定めている、面接しているとも言えます」
「面接するのは私だ」
 「そのあなたを面接していると言っているのです」
「俺はおまえを潰す!」
 「潰すとは具体的にどういうことでしょうか。
肉体的、精神的、はたまた社会的にも捉えられますが」
「潰すとは潰すの意味しかない」
 「失礼しました」
 「しかし、黙って潰せばいいものを、わざわざ『潰す!』と宣言するとは、これは私の反応を伺っている――面接の一環であるということでしょうか」
「私はお前を面接する」
 「ところで先ほどからタメ口ですか?」
「私はお前を面接する」
 「質問に答えていただきたく存じます」
「タメだ」
 「口が抜けています。同い年と解釈してさしつかえありませんか?」
「私はお前を面接する」
 「オマエは壊れたテープレコーダーでしょうか」
 「申し訳ありません。つい平素の、気の置けない友人間での口調が入り混じってしまいました」
「しかたないな」
 「恐れ入ります」
「ん?恐れているのか俺を」
 「そういう意味の語句ではありませんが、たしかにある種の恐れを抱いているのは否めません」
「そうか、気をつけろ」
 「いざというときの備えはありますので心配は無用です」
 「お気持ちだけありがたく頂戴します」
「気持ちなどない」
 「うわべだけで発言されていたのですか?」
「気をつけろ。には気をつけろ。の意味しかない。気持ちはない」
 「しかし、あなたに気をつけろとは、あなたの危険性を踏まえた上で、私の保身を案じている含みを持たせていることが行間からは読み取れます」
「気をつけろ。には気をつけろ。の意味しかない」
 「もしや、気をつけ!ということですか?」
「ろがない」
 「頭の中が朝礼の風景でいっぱいでした」
「そうか、気をつけろ」
 「前へならった方がいいですか?」
「俺はお前を潰す!」
 「どうぞ?」
「俺はお前を面接する」
 「どうぞ」
「そうか、気をつけろ」
 「どうぞ」
「ここは日本だ」
 「どうぞ」
「銅像」
 「オー、ノー」
「俺はお前を潰す!」

 「ちゃんと面接をしてください」
「俺はお前を面接する」
 「先ほどから宣言ばかりで内実が伴っていません」
「そうか」
 「そんなようなら、私はあなたに面接されません」
「どうぞ?」
 「私はあなたに潰されません」
「どうぞ」
 「私はあなたに気をつけません」
「どうぞ」
 「ここは日本じゃありません」
「どうぞ」
 「日本ですよ」
「どうぞ」
 「ドジョウ」
「すくい」
 「あぁ、救われました」
「そうですか」
 「やはりここの会社に決めてよかったと思います」
「はい、僕も」
 「えっ?」
「えっ?」
 「 (暗転) 」

(20060127/れどれ×タケシン/即興チャットコント)


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