できる限り、視線をはずす。
見ないように、見ないようにって。

できる限り、声をかけないようにする。
声はかけるまい、かけるまいって。


それなのに、すれ違ったとき、笑って、声をかけてくれるあなた。
あたし一人、もやもやしてて、哀しくなる。


握った手の感触が、忘れられない。
大きくてあったかい手が、確かに、あたしの手にあったんだ。

ひょんなことで、握ってしまって、そのままだった。
あなたは、握った手のことは、触れず、そのままにしてくれた。
怖がるあたしにかけてくれた声は、いつもとは違う声だった。
優しくて、なだめるような柔らかいトーンの声。


一日過ごしたけれど、歩くときは、手を握った。
あたしが、その手を求めて、握ってしまったんだ。
優しいあなたは拒否せずに握ってくれた。
其の理由を触れずに、黙ってくれていた。


あたしの気持ち、気がついてるんだろうな。
気がつかないはず、ないよね。


優しいから、ただ、触れずにいてくれてるだけだよね。
そこに触れれば、二度と、今のようにいられなくなるから。


なんで、好きになっちゃったんだろう。
なんでだろう・・・。


実らない恋なんて、したくなかったのに。