ヒルカニヤの虎



 織りなす糸はいつか誰かの

花と愛とオカマが旗印のオトメメンの楽日を見てきました。
「歌舞伎町にお笑いを見に行ってきます!」と颯爽とゼミ早退するわたくし。後輩ちゃんたちのブーイングは聞かなかったふりで、今週もゼミ飲み会=教授のお守は放棄する。


■劇団乙女少年団 第十一回公演‘ピンクの指輪ちゃん’2010/11/12/Fri_19:00-@新宿FACE

初のオトメメン参戦。またもやすごいものを見た。
家城さんのつくるものは猥雑で濃くて熱くて脂っこいのに、後味がサラサラしててきれいな水色なのがいつも不思議。
舞台のすぐ前がテーブル席(おかまウェイター付)で、その後ろに普通の客席が並んでいる。花見席もあったみたい。テーブル席を除けば結構な前方の真ん中寄り、良席でした。
ANAが30分以上遅れやがったせいで作・演出の家城さんが「撮影・録画可だけど某所にアップするときは空気読め」と注意してる最中に着席したのですが、あとでこの意味がわかった。
1回しか見てない&生ビール飲んでたのでだいぶ記憶があいまいです。観劇中にメモできる器用さがあれば…っていうかそもそも録画可なんだからiPhoneか何かに録音できたんだった。しまった取材用のテレコ持ってけばよかった!おそらく録画なり録音なりしてる人がレポ書いているだろうから、できるだけさらっと、家城さんの熱に引きずられないように備忘録。


愛されたかったらまず上手な愛し方を学ばなくては。

舞台上はグランジ五明さんのコラージュ風の顔写真が一面に。
暴力的で男くさい父親(五明)から、虐げられ殴られて育ったマコト(パンサー菅)。小さい時に死んでしまった大好きな母親の部屋で女物の服を着て、メイクすることが心の慰め。「ぼくのバラ色の人生」みたいなね。ママが好きでママみたいになりたかったマコト。でも女っぽく育つ息子に不器用な父親の暴力は増すばかり。
マコトがはたちになったある日、殺したいほど憎んでいた父親は自殺する。あとに残された意味不明な遺書と、ピンクの指輪から物語は始まります。
遺書の意味がわからず、気持ち悪くて途中で読むのをやめたマコトに声をかけてきた全身白いスーツの男(ジャンポケ斎藤)。うちの店へ来てかわいい女の子にならないか?という誘いに乗ったマコト。1つのセンテンス内で男言葉から女言葉へ変わるのよかった。斎藤さんの舞台声の張りと間はさすがの文芸座出身。
オカマたちが集うデリヘル風のお店には金髪グラムファッションのスミレ(かたつむり林)、メイド服のラン(ピクニック)、セーラー服のガーベラ(パンサー向井)、赤いリボンに毛むくじゃらきぐるみを着たチューリップ(デッカチャン)、角刈りで給食のおばちゃんスタイルのタンポポ(オコチャ)がいる。白いスーツの男はナンバーワンボーイのホワイトローズ。その部下に赤いスーツのキク(畑仲しんじろう)。
スミレは「お姉ちゃんに敬語なんておかしいでしょ」と言う姉御肌。ランは小さくてキャンキャン鳴くけど若手芸人の彼氏(パンサー尾形)を愛している。ガーベラは癒し系で小悪魔、チューリップも癒し系。紹介されないタンポポはオカマっぷりが雑すぎて、マコトと入れ替わりにクビに。キクにつまみ出されるタンポポ。これがのちにひとつの悲劇を生む。
ホワイトローズから「ピンクローズ」と源氏名をつけられたマコトに湧く先輩オカマたち。なぜ、これまで付けられなかった名前「ローズ」がマコトに冠されたのか?それはのちのち明らかに。そしてホワイトローズに恋してしまうマコト。
5人のオカマたちが在籍するお店の仕事は実はオカマの殺し屋集団。彼女らは依頼をうけて、世の中の悪事を働く人間をピストルで暗殺する。なんか「処刑人」みたいね。最初おかまのデリヘルと勘違いしていたピンクローズは、出し入れされるのは怖いけど舐めるのは興味ある♪と具体名を出して無駄死にしていました。こういうとこもアップしちゃいけない部分と思われる。
愛されたいホワイトに愛されない。愛されたい愛されたい、どうしたら愛される?きれいになりたい、きれいになるためにはお金がいる、そのためには働かなくちゃ。スミレの導きで初めて人を殺してから、ピンクは殺人とオカマを謳歌するようになります
さらに愛されるためにはち●こをとれば?というオカマたち、スミレとランは切ったち●こを鞄のなかに入れて持っている。ガーベラはなんだかもったいないからとってなくて、チューリップはそもそも殺戮マシーンの試作品だからついてない(※突如明かされる重すぎる設定)。とるのなんて簡単よ!という流れになり、チューリップことデッカチャンの巨体に羽交い絞めにされ、両脚を広げられてち●この根元を紐で縛られるピンクローズこと関町(ほんとにやってるのかなあ?真実は闇の中)。おさなごの奥歯を抜くごとく、ち●こにつながった長い紐をひっぱったりわざとつまずいたり、みんなで大縄跳び(!)をしたり。けっこう本気のテンションでわめき倒す関町、もう役が入っていなかった。泡吹くいきおいで悶絶。ここもっとも某所にアップしたら家城さんのクビがとぶゾーン。モラルのかけらもございません。
このあたりでレッドローズが中国から帰ってきたのだったっけ。中島みゆきの「糸」を歌いあげながらの登場。久々にノブコブ吉村がオトメメンに帰ってきたのに、おもいのほか湧かない会場。いや湧いてたと思うんですけど、私はオトメメン初見だからわからない。
レッドはただただ愛されたいピンクに「愛されるよりも愛することを覚えなさい」と言う。そして明かされる衝撃の真実、「ホワイトはゴリゴリのホモよ」。な、なんだってー!女の子になったってきれいになったって愛されないことを知り、アイデンティティがゆらぎまくるピンク。
オカマの殺し屋軍団にはもともと前身があって、創設メンバーの4人にはローズの名がついている。ホワイトローズと、深紅のドレスのレッドローズ(平成ノブシコブシ吉村)と、マコトの父であるブルーローズ(五明)と、母であるピンクローズ(故人)。彼らは全員ピンクの指輪をしていて、ピンクローズがマコトを身ごもったときに組織は中国勢力の傘下に入った。マコトがピンクローズの名を継いだのはそういうわけ。そしてホワイトがマコトに声をかけたのは、組織の金を奪って死んだブルーの遺書に金のありかが隠されているのではないか、とボスが差し向けたから。そして明かされるブルーローズの性癖:バイ。そしてホワイトとブルーはデキてて、実の父親が好きな男に抱かれていたという事実。そんなホワイトローズも、組織への忠誠とマコト=ピンクローズへの思いのあいだで揺れていた。昔のマコト=パンサー菅と今のマコト=ピンクローズの関町がホワイトローズに対峙するシーンは圧巻でした。
死んだ父親の本当の思いをローズに教えられ、愛のありかたをスミレに死をもって教えられたピンクは「わたしのアイデンティティ、あげる」とホワイトローズと駆け落ち(?)をする。ラストシーンは空港で、ピンクは男のマコト(菅)に戻っていて、2人ともハードボイルドなスーツ。目を刺すバックライトを背にマコトはサングラスを外して客席にニヤッと笑う。先に行こうとするホワイトの腕を引いてマコトからキスをして、2人は手に手をとって逃避行、光の向こうへ。もう女にこだわることがなくなったマコトは人間としてかっこよかった。あーなんかちょっと昔の高村薫っぽいな。

と、だいぶ端折りましたがこのようなメインストーリーに、サブストーリーのスミレ&キクの物語が交錯し、グランパだかパンジーだか(グランジ遠山+佐藤大+パンサー尾形)のおもいのほか面白いトリオ漫才が交錯し。
サブストーリーのスミレさんが私は大好きでねえ、やっぱりかたつむり林はたいした役者だと思った。スミレさんは情があつくて優しくて照れ屋で、自分をババアというすれっからし。でも本当は年下の‘ぼうや’のキクを純粋に愛していて、ぎこちなくも2人は踊りを通して近づいていく。なんだっけな、舞台は大地、照明は月明かり、音楽は鼓動、だったかな。月夜に踊る2人がよかった。かたつむり林がどんなにゲスく畑中しんちゃんををまさぐっていたとしてもだ。その後2人そろってのマイケルジャクソンのダンス(曲名わからず)もよかったけど。スミレはタンポポに刺されそうになったピンクを庇って致命傷を負うのですが、最期は好きな男の腕の中。ババアの最後のお願い、と言ってキクにキスを頼むのだけど、キクにとってスミレは愛や恋の対象ではなく、尊敬と憧れ。「死ぬ前に振られちゃったわぁ」というスミレは、でも大切なのは自分の気持ち、キクが本当に大好きだったという気持ちだという。最期にキスしてもらって、「ラッキー…」とこときれるスミレ。そうしてキクはオカマになる。スミレそっくりのグラムなオカマに。
このスミレ役は家城さんがやりたかったのじゃないかなあ。そんな思い入れを感じた。あ、でも家城さんにはレッドローズをやってほしいかもしれない。
この「いまわのきわのキス」はランと彼氏の尾形のターンにも繋がっていて、尾形と間違われた佐藤大がレッドに発砲され、死に際に男にキスされていました。佐藤大あわれ。尾形とランも逃避行したのだったっけ。
あ、あと大会をめざす踊り子3人(ライス田所+ジャンポケ太田+武山)の変態レヴューが花を添えていました。たーどーこーろー!太田がすごくいい顔といいキレで踊っていたのに、田所仁に釘付けでした。あんな残念な体なのに!

ああ、もう1回見たかったかもしれない。


結局オトメメンを最後までみると21:15〜22:15のロシモンの裏(ゲスト:ハマカーン)を6分しか見れないことがわかり、いつもお世話になっているmythmさんと相談して泣く泣くあきらめる。だってオトメメン最後まで見たかったんだもの。でもハマカーン…ロシモン…残念だ。
その後は新宿に居座ってカリカオールナイトまでいつものお笑いトーク。おもに正月のシュール5とライスの奇跡的造形について。あの2人のポテンシャルは本当に底が知れない。
とりあえず来年の正月も上京することになりました。

2010年11月12日(金)
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