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2007年10月06日(土)
 聖牛の酒 3) 完結


「凍ってるんですか?」
女主人が手にしている霜のついた小ぶりな瓶を見て、テンゾウが問う。
「アルコール度数が高いんで冷凍庫に入れたぐらいじゃ、凍りゃしません。でも、独特の風味が生まれるんです」
手ぬぐいで霜を拭いて、カウンターに置く。
ラベルには牛だろうか? 動物の絵が描かれている。中身はうっすら緑がかって見える透明な酒だ。
同じように霜のついた小さなグラスが並ぶ。
「あれ? 草?」
瓶のなかに細い草の茎のようなものが見えた。
「はい」と女主人は微笑みながら、瓶の蓋を開け、グラスに注いでくれた。
「あ?」
「はい?」
思わず声をあげてしまったオレは、あわてて首を振った。
トクンと心臓が高鳴る。テンゾウがチラとオレを見て怪訝そうな顔をしたが、何も聞いてはこなかった。
トロリとした液体でグラスが満たされる。
「乾杯」
オレたちはグラスをかかげて、口をつけた。
濃厚で、ほんのり甘く、けれど身体の芯が熱くなるような――
「ああ、ほんとうだ。“きゅぅーっとくるような、強い酒”ですね、まさに」
言葉の出ないオレに替わって、テンゾウが頷く。
「これ、蒸留酒ですか? でも、独特の甘い香りがありますね」
女主人は、はいと答えた。
「牧草を漬け込んで作るそうです、が、この香りには好き好きが分かれるところですね」
「そうですね、少しクセがありますから……でも、ボクは嫌いじゃないですね」
「そりゃ、よござんした。なんでも、特別な森に生息する聖なる牛が食べる草だそうで。その牛は力強さ、威厳、稀少性を象徴するのだとか」
――力強さ、威厳、稀少性……。
女主人の言葉をオレは心の内で反芻した。
――威厳は……ないな。でも、それ、オレの前だからかな? 力強さと稀少性なら……そのとおりじゃないか。
「何をブツブツ言ってるんですか?」
テンゾウの声に、オレはニッと笑う。
「おしえてやんな〜い」
はぁ、と呆れた顔をしながら、オレの機嫌のいいことを察知した後輩は、まぁ、いいですけど、と呟いた。

「ねえ」
混んで来たのを機に、立ち飲み屋を出て、部屋に戻る。
まだ寝るには少し早い。テーブルの上には、先ほどの酒。オレが部屋で飲むと言ったら、彼女はわざわざ冷凍庫に入れていた1本を譲ってくれた。
「飲みます?」
テンゾウがボトルを指さす。
「一杯だけ」
はいはい、と言いながら、自ら立ち上がってグラスを洗い、冷凍庫にしまう。
それからストッカーを覗いて、ナッツの袋を取り出した。封を切って皿に空ける音。
「あまり、つまみのいらない酒ですけど」
そういいながら、先にナッツの皿をテーブルに置く。ほんと、マメなやつだ。
このナッツだって、前に会ったときテンゾウが買ってきたものの余りだ。
それから冷凍庫にしまったグラスを取り出す。
申し訳程度に霜の付いたソレを、テーブルにトントンと並べ、封を切る。
ちょっと薬草にも似た甘い香りが漂った。甘いけれど、フローラルな甘さではなく乾草独特のグリーンノート……。
――テンゾウの匂いだ。

そう……さっき、店で気づいた。
もともとオレは体臭が薄いほうで、テンゾウも同様だが、それでもまったくゼロではない。
テンゾウの薄い体臭を感知すると、オレはほっとする。
ここが戦場ではない、という証拠でもあるし、いとしいテンゾウの匂いだ、というのもある。
すっかり馴染んだその匂いは、いつもオレにとっての安らぎと幸せとともにあるから、かもしれない。
とにかく彼女が封を切ったとき、不意に香ってきた匂いに、びっくりしてしまった。
もちろんまったく同一ではないし、普段のテンゾウの体臭がそれほど強く香るわけでもない。
それでも、とてもよく似た、独特の香りだった。
「はい、乾杯」
とグラスを掲げるオレに、テンゾウは目元を和らげる。
「そんなに気に入ったんですか?」
オレはふふ、と笑う。笑いながら、グラスを一息であける。
トロリと喉を滑り降りていく酒には、焼けるほどの熱はなく、けれど胃の腑におさまるとじんわりと熱を持つ。
そんなところもテンゾウと同じだと思う。

――いい男になったね。
グラス半分を開け、ナッツを口に放り込むテンゾウを見る。
――ほんと。いい男になった。
改めて、思った。
日常接するのが、ひよっこたちだから、余計、感じるのかもしれない。
ヘラヘラしているオレを気にすることなく、テンゾウは茫洋とした表情を浮かべ、時折、思い出したようにナッツを摘む。
オレがかまってほしいのか、放っておいても大丈夫なのか、コイツはちゃんとわかっている。
そして、オレのことを無視するでもなくオレの隣でくつろいでいてくれる。
ここは、とても重要なポイントだ。
お互い気を使うことも必要だけど、互いの前でくつろげない相手も難しい。
付き合いはじめのころは、見栄もあるからどうしても格好をつけてしまう。それはそれで悪いことではないけれど、長く続くのはくつろげる相手かもしれないと、オレは最近思うようになった。
長く続いたのは、テンゾウだけだから、言い切ることはできないのだが。
――おまえだけでいい。おまえがいればいい。
言葉にはしない、オレの思い。
オレは、隣に座るテンゾウの唇に、唇を重ねた。ごく、軽く。挨拶代わりのようなキスだ。
テンゾウは、オレを見てオレの好きな表情でほんの少し笑う。
昔は、こんなふうにキスをすると、戸惑ったり慌てたりしていた。
少し慣れてくると、「欲しいんですか?」なんて聞いてくるようになった。
最近では……オレがじゃれつくと、それがその先を期待してのことなのか、かまってほしいという合図なのか、ただじゃれてみただけなのか、読み違えることもなくなった。
そしてオレも……テンゾウが言葉にしない鬱屈をわかるようになった。

暗部随一の使い手と言われ、大きな任務の際には決まって隊長を務めるテンゾウには、たとえ相手がオレと言えども、口にできないことがたくさんあるはずだ。
かつて、オレがそうだったように。
だから、オレは何も聞かない。
ただ、テンゾウがオレの側で居心地よくくつろいでいればいいなと、それだけを思う。
だからといって、かいがいしく世話などやいたりしない。
テンゾウは、オレにそんなことを期待していない。そうでなければ、とっくにオレは捨てられている。
オレだって、テンゾウにかいがいしく世話をやいてもらいたいなどと思っていない。
ただ、オレよりは日常生活に関することで気が回って、オレよりは多少、料理の腕があるから、必然的にテンゾウがアレコレと動くことが多いというだけだ。
オレだって、たまにはフライパンを振るし、気が向けば気合を入れて食事の支度を調えたりする。
そんなとき、テンゾウは素直に感激するけれど、次も、と期待はしない。
結局、オレたちは自立している一人前の忍なのだ。
基本的に、他人の手を必要とはしない。
それでも、だれかとよりそっていたいとき、というのは、あるのだ、オレたちにも。

「先輩」
テンゾウの腕がオレの肩を抱き寄せる。
オレは素直にその腕に従い、テンゾウの肩に頭をもたせかける。
「無茶なお願いかもしれませんが」
肩にかかるテンゾウの手に、力がこもる。
「長生きしてください」
「ん。一応、努力はする」
オレの答にテンゾウは、ふっと笑った。
きっと……仲間をなくしたのだろう。
暗部に限らず忍に死はつきものだ。
いちいち傷ついていたら、それこそココロが傷だらけになってしまう。
それでも傷つかずにはすまないのだ、忍も人間である以上、ヒトとしてココロは痛む。
それを捨て去ってしまったら、その忍は終わりだ。ただの……傀儡になってしまう。

だれが死んだのか、オレは問わない。
ただ、テンゾウがこれだけ消沈しているのだ。
直属で目をかけていた部下か、あるいは仲の良かった同僚か。
オレは、テンゾウに近い左手を伸ばして、身体越しに右手を探った。
オレの手の動きに気づいたテンゾウの手が、オレの手を掴んだ。
指を絡ませ、強く、握る。決して離すまいと、強く。
「テンゾウも、長生きしないとダメだよ」
ふっと、気配が強張った。
「テンゾウのクセにオレより先に死んだら、オレ、葬式なんて出ないで遊郭で豪遊しよっかな〜」
オレの軽口に、テンゾウがクスと笑いをこぼす。大丈夫、笑えるんだったら、とオレは安堵する。
「豪遊ですか」
「そうだよ。店、貸切にして、100人切りしちゃうから」
「いえ、どんな大きな見世でも、100人も抱えてませんから」
「だったら、5軒10軒、貸し切ればいいじゃない〜」
「確かに」
ほぅ、とテンゾウが息をつく。
「死んでも死に切れませんね、それは」
「でしょ? だから、おまえも長生きしてちょーだいよ」
「はいはい」
傷心の後輩は、ぎゅっとオレを抱き寄せ、チュッと可愛いキスをしてくれた。
「寝ましょうか」
「寝よっか」
今夜は、ただ静かによりそって。
明日のことは、また明日考えよう――。



<了>

ズブロッカ
ポーランド生まれのライ麦を原料としたウォッカ。ズブロッカの"Zubr (ズブ)"は、ポーランドの世界遺産"ビアウォヴィエジャの森"に生息するわずか600頭の聖牛を意味する。牛たちが好んで食べるバイソングラスを漬け込んだ酒は、古くから滋養強壮や精力増強に効果があると言われている。実は、この匂い、桜餅の葉の匂いと同じ成分だとか。