世田谷日記 〜 「ハトマメ。」改称☆不定期更新
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2013年09月18日(水) 横浜事変

 
矢作俊彦「ロンググッドバイ」という小説のことと、読後に起きたことについて書いておきます。

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昔は好きだったり、素晴らしいと思っていたものが、時を経て姿を変えたときに、それでもまだ変わらず好きだ、素晴らしいと思えることはまれだ。このごろとみに「悪く言う気にはなれない」から静かに目を伏せ、口をつぐむことが多くなった。


にもかかわらず、矢作俊彦の描く横浜はなぜ今も、特別な魅力を放ち続けているのだろうか。横浜のみならず、往事の活気を失った横須賀ドブ板通りでさえも、彼の物語の中では特別な空気、それでもここでは余所では起こらないことが起こる場所なのだと思わせる特別な空気に包まれている。


これはおそらく作家の脳の仕組みにかかわる話なのだろう。世の中をどのように認識するかということに関しては、人間は持ってうまれた自分の脳みそのパターンの奴隷なのではないかと、私はそう思っている。つまり、矢作俊彦にとって世界(横浜、横須賀)はこのようにしか見えないのだろうな、と。トシちゃんのロマンチック脳炸裂。


ところが、困ったことに(幸いにして?)私も負けず劣らずのロマンチック脳ホルダーでございましてね。すっかりワクワク、物語を楽しみ尽くしたあとで、これは一度ヨコハマへ行かねばでしょう!という気持ちになってしまった。横浜は長く住んだり勤めたりした場所だけれど、みなとみらい地区が出来上がりかけたころから疎遠になって、今のヨコハマのことはほとんど知らない。


それで、物語のラストシーン近く、母親の捜索を依頼した海鈴(若くて美しいバイオリニスト)が野外コンサートをするランドマークタワー脇のドックヤードガーデンあたりを一日散歩しに行ってみるか、と思っていた折も折、某所から仕事の依頼メール。そのメールには「×××プラザ×階のお店に出ていただけませんか。いえ、ぜひいらしていただきたいのです」と書いてあった。


…ちょっと待て、その×××プラザって、ドックヤードガーデンに隣接して建っている商業ビルとちがいますか。おい、おい、なんだこれ、おい!!


というわけで、いまでは月に6日ばかり湘南新宿ライン(こんな便利な電車むかしはなかったな)に乗って桜木町まで通っている。
海をバックにたつ大きな観覧車と、日本丸の帆柱を動く歩道の上から眺めながら、晴れでも雨でも、朝でも夜でも、絵になる眺めだなあと感心してしまう。


これで仕事がうまくお金に結び付くともっといいんだけど…、それは矢作俊彦「ロンググッドバイ」とは関係のないことでございましたね。








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