萬葉集覚書

2006年12月09日(土) 2 大和には 群山あれど 

大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山
登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ
海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は



この大和の国に山は数々あれど、とりわけ素晴らしい香具山の頂に立って私が治めるこの国を眺めれば、国土には民の煮炊きする煙が多く見え、南の湿地帯にはゆりかもめが舞い、いかにも豊かではないか。



舒明天皇の御製とされる長歌です。
歴代の天皇の大切な儀式の一つとして、「国誉めの儀」というものがありました。
どこか高いところに立って、見渡す限りの国土を誉め称えるわけです。
古代、神々はいたるところにそのお姿を現して、民草とともにあると考えられていました。
天皇は、祭政一致の象徴としての役割が大きなウェイトを占めていた時代には、そういう神々が宿り賜う国土を誉め称えて、国の称栄(いやさか)を祈念することが、重要な仕事だったわけです。
言霊という存在が真実のものとして信じられていた、そんな時代の国家の生産力を維持上昇させる手段として、欠かすことの出来ない儀礼だったわけです。

この歌も、だから、舒明天皇の御製ということになっていますが、歴代のどの天皇が詠ってもよいわけで、連綿と歌い継がれて来た里謡のひとつなのでしょう。

誉めれば誉めるほど豊かで美しい国になる。
昨今の教育の真髄を見るようで、人間も国土も誉めれば伸びるということなのでしょうか。


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セレーネのためいき

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