カゼノトオリミチ
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川沿いのハナミズキは
早々と初夏の光を
浴びて白く輝く
さくらのなごりが
その下の川面にまだ
浮かんでいるのに
ずいぶん今年の春は
急ぎ足で去ってゆく
くふん と鼻でないて
横たわった老犬は
菜の花かすめて吹いてきた風と
なにやら話している様子
だんだん太陽傾いて
二時をまわれば
今日が淋しくなってゆくから
春が翳ってゆく前に
見えない瞳をなお閉じて
行ったことない夢の国
風のおみやげ
遠い国の波の音 子守唄に
うとうととして
春の日は またひとつ
過ぎてゆく
ゆっくり おやすみ
natu

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