友人が仕事を辞めて広島へ旅立っていった。 いつ戻るかわからない。 どう暮らして行くのかまだ目処がつかない。 わたしとひとつ違い もう若くはない。 けれど旅立ちは始まり。 電話で旅立ちの日を告げる彼女の声はちょっと暗かったのに さよならを言う頃にはちょっと明るくなって 旅の前のわくわくが血管の中を巡り始めていた。 最後に、 約束して。 と、彼女は言った。
笑ってて。何があっても笑うの。下向いちゃだめ。 前向くの。
わかった。と、わたしは約束して、 でもずるいよ。Sはそもそもの顔のデザインが笑顔なんだもん。 と言った。 Sは笑って、 そうなんだよね。丸顔でねえ… ふたりで笑った。 遠くなってもさびしくはない。 つながっているという実感がある。 この人とはつながっているという実感がある。
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