禍福糾えるごとくの一週間でありました。 禍の方は自分で招いたもののようでありましたが… まあ 仕方がない。 時間が解決してくれることでしょう。 気持ちをフラットに、時の流れに流されましょう。 オールを持たずにボートで流されるように さて辿り着くのはどこだろう? 心から悲しいことはだれにも言えない。 なので言わない。 そうすると寡黙になってしまうんだな。 ある夜のこと 五十近くにもなる娘の頭を 母は撫でて言うのでした。 もっと幸せになって欲しい…って。 と言うことは、あたしはしあわせに見えないってこと? さまざまなことがあるけれど これでも結構しあわせなのだよ、あたしは。 しあわせのてんてんをつないで もっとしあわせになって行くのだよ、これからあたし。 青空文庫で宮沢賢治の可愛い文章を見つけました。
『注文の多い料理店』序 宮沢賢治
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃(もも)いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしゃ)や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。 わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹(にじ)や月あかりからもらってきたのです。 ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾(いく)きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。
大正十二年十二月二十日 宮沢賢治
底本:「注文の多い料理店」新潮文庫、新潮社 1990(平成2)年5月25日発行 1997(平成9)年5月10日17刷 初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社 1924(大正13)年12月1日
明朝は晴れるとのこと。 美しい桃色の日光を思い切りのみ込みましょう。 今から楽しみです。 おやすみなさい…
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