はぐれ雲日記
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2000年11月01日(水) 小番頭はん

さきほど、にあんちゃんの誕生日にと駆けつけてくれた長男が帰った。
夕方の4時に到着して夜中の12時半に帰って行った。
仕事は朝といっても2時半のセリに出るわけだから、ほとんど寝ないで仕事に直行。
交通事故に気をつけるんだよぉ。
飲みすぎるなよ〜。
ちゃんとメシ食うんだよー。 もう、祈るような気持ちだ。指圧の心、母心。

青菜と油揚げの煮びたしと、大根の味噌汁をトン、と置いて顔を見ると
キタナイ無精髭! 「なんやコラ。ミットモナイ!貧乏神みたいな髭生やして。
上野忍ばず公園のホームレスやんか! 魚売れないわな。 清潔感無いと!」
ポンポンいうわたしに「これがみんな同情して魚買ってくれるんだよなー。」
とヘラヘラしている。 ちょうど今日剃ろうと思ってたんだよねー。とかなんとか。
それからかーちゃん、築地で一番上等の鯵のヒラキも焼いてくれよな〜。ヘラヘラヘラヘラ・・・。
「鯵のヒラキに極上も下等もないだろーに・・・。」と思いつつじゅうじゅう焼く。

味噌汁の大根は千切りやいちょう切りやサイコロなどいろいろに切った。
それをがばりがばりと口へ放り込みながら、ちょっとぎこちなく言ったこのことば。
「俺、小番頭になったんだ!。」 それから中番さん、大番頭さんとくる。
「あーじゃあ、店もすぐつぶれるかもね♪」ちょっとからかったつもりだったが
「ウー。そうかもしんない・・・」  誉めてくれなかったのが心外とばかりに感情を押さえて受け流した。
よし。少し大人になった。ここでやさしく
「なーんでまた、おまえみたいな若造が。番頭は10年、20年選手でないとなれないんよ。」

「だってオレ、仕事できるもん。」
「休んだことは一日も無いし・・・。」
ああ、駄目駄目。そういうのは態度や顔にでちゃうんだよね。
人様は顔で笑っていても腹で馬鹿にするからね。
まだまだ素直に下出に・・・。だまって先輩の仕事ぶりを盗んでね。
入ってまだ2年目なのだから、電信柱でも誰にでも挨拶するんだよ。 頭を低くして。
イヤな仕事はおまえが先に立ってやるんだよ・・・。
魚河岸というところは以外に因習の世界。
長男は居住まいを正して、はい、はいと聴いている。

帰り際、後姿を見てがく然とした。
異様に右肩が下がっている。
来る日も来る日も相当重いものを担いでいるのだろう。
手取りは15万円ほどだが、入社時より毎月9万円の仕送りをしてくれている。

ハタチの小番頭。 お江戸日本橋七つ立ち・・・よりまだ早い。 七つ立ちは4時半だからね。




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