2009年07月14日(火) |
若い頃むし歯ゼロだった総入れ歯の高齢者 |
先日、ある方から質問を受けました。
「口の中の歯垢の量とむし歯の数の多さというのは関係があるのですか?」
質問をした人の話によれば、知人に歯を熱心に磨いたことがない人がいるが、その人は生まれて一度も歯医者に行ったことがない。なぜなら、むし歯になったことがないため歯医者に行く必要がなかったからだとのことでした。
僕はあることを話しました。それは、若い頃むし歯が全く無かった総入れ歯の高齢者Aさんの話です。Aさんは若い頃は歯が丈夫であることが自慢でした。むし歯になったことが一度もなく、歯医者を受診したことがなかったそうです。歯を熱心に磨き続けていたのか?と問われれば、そうではなかったとのこと。歯を熱心に磨いたことがなく、むしろ歯を磨かなかった日の方が多かったそうです。けれども、一本のむし歯にならなかったとのこと。
そんなAさんでしたが、50歳を過ぎた頃から一本、また一本と歯が揺れだし、放置しているとどんどん揺れだした歯が自然に抜けだしたとのこと。最初のうちは気にならなかったそうですが、年齢を重ねるごとに歯が抜け、食事が不自由になるくらい噛めなくなったとのこと。重い腰をあげ歯医者に行ったところ、既に残っていた歯も手遅れで抜歯し、いきなり総入れ歯になったそうなのです。
むし歯が一本も無かったAさんがどうして総入れ歯になってしまったのか?ここに歯の歯垢とむし歯の関係が如実に表れています。 むし歯というのは様々な要因で発生しますが、大きな要因の一つがむし歯菌です。むし歯菌は何種類かありますが、口の中にあると言われる300〜400種類のばい菌の中のほんの一握りです。むし歯菌の数は個人差があり、人によって多い人もいれば少ない人もいます。ということは、歯垢が多い環境であってもむし歯菌は少ない人がいても不思議ではありません。 歯を磨かなくてもむし歯にならない人の中には、こうしたむし歯菌が少ないことが考えられます。歯を磨かなければ歯には歯垢が沈着し、汚れますが、むし歯菌の数が少なければむし歯になるリスクは低いのです。Aさんのような人はこのようなケースに該当したように思います。
ところが、歯周病に関しては歯垢の量と歯周病の重篤度とは関係性が立証されています。すなわち、歯を磨いて歯垢を取り除かなければ歯周病になり、放置すれば歯周病が進行し、歯が動揺、最終的には歯が抜け落ちてしまうのです。
学校検診をしていると、口の中が大変汚れているのにも関わらずむし歯ゼロという生徒がいます。おそらくこのむし歯ゼロはこのまま変わらないかもしれませんが、このような生徒は必ず歯周病になっています。しかも、歯周病は進行し、放置しておけばAさんのように歯が全て抜け落ち総入れ歯となる可能性が大です。
歯磨きを熱心にしなくてもむし歯にならない場合はありますが、歯周病は進行します。歯を磨かなくてもむし歯にならないと自慢している人は、後で大きなしっぺ返しを受けることになります。歯周病という病気に。
歯の健康維持のためには、日頃の歯磨きが欠かせないわけです。
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