2008年10月08日(水) |
美容整形と入れ歯の共通点 |
「あのMって女優、目を整形しているわ。」 「Yって子は顎と鼻は確実に触っているわね。」 「Fの歯は妙に白すぎるわね、絶対に差し歯だよね、そうさん?」
よくぞそこまで女優の顔のことを見ているなあ!と思うくらいの嫁さんのコメント。テレビに出演している女優を見ているとファッションや顔のことによく目がいく嫁さんです。僕などは“そんなことどうでもいいじゃない!”“綺麗であればそれでいいのではない?”と言いたくても言えないくらい雰囲気を醸し出しています。 ただ、確かに嫁さんの指摘どおり、じっくり顔を見ていると、少なくない女優が顔の一部を整形しているのは間違いないようです。僕は歯医者ですのでついつい口元に目がいきます。最近の被せ歯は材質の進歩から本物と見間違うくらい精巧なものもあるのですが、だいたい歯を被せ歯にしていると直ぐにわかってしまいます。時々、この時のことを歯医者さんの一服では有名人口元チェックと称して日記ネタにしています。そういえば、最近有名人口元チェックをしていませんね・・・。
それはともかく、美容整形についてですが、入れ歯と美容整形は共通点があることをご存知でしょうか?何やら似ても似つかぬ入れ歯と美容整形。一体何が共通しているのだろう?と思われるかもしれません。
入れ歯を使用している患者さんの中には、突然、歯科医院に駆け込んでくる患者さんがいます。
「先生、入れ歯が割れてしまいました。何とか使えるように修理して下さい。」
入れ歯は基本的にプラスチックや特殊なカーボン線維を使用した人工物です。一方、口の中の環境は非常に苛酷です。絶えず唾液により濡れていますし、一日に何度も食事を噛む、咀嚼しなければなりません。口の中には300種類以上の雑菌が存在します。このような劣悪とも言える環境の中で、歯の無い人は入れ歯という人工物を四六時中使用しているわけです。自ずと入れ歯には対応年数があることがわかると思います。
ただ、入れ歯が割れる場合、入れ歯の対応年数以外の要因が大きく影響します。それは体の変化です。入れ歯は入れ歯を新しく作った際には体にフィットしています。ところが、時間が経過するにつれ、体はいろいろと変化します。
想像して欲しいのですが、数年前に撮影した自分の顔と現在、鏡に写った自分の顔は同じでしょうか?おそらく違うはずです。誰でも時間経過とともに、自分の気がつかないうちに体は変化するものなのです。口の中も一緒です。いつも同じように食べている口の中も時間の経過とともに微妙に変化しています。ところが、入れ歯はどうでしょう?残念ながら入れ歯は作った当時のままの形を維持しています。使っているうちの人工歯が磨り減ったり、材質が変色したりすることはありますが、外形は変化がありません。
変化する体、口と変化しない入れ歯。相反する口の中と入れ歯の状態。入れ歯を定期的にチェックし、調整しないといけない理由がここにあります。入れ歯は変形しませんから、現在の体、口の中に合わせる必要があるのです。そうしないと、入れ歯を使用して歯肉が痛くなったり、入れ歯が割れたりするのです。
実は美容整形も全く入れ歯と同じなのです。美容整形は手術を受けた時点の体に合わせて処置を行います。ところが、体は経年的に変化をするものですが、美容整形を施した部分は基本的に手術をした時点のまま。そうするとどういったことが起こるか?時間の経過とともに、美容整形した部分は体の変化についていけず、元々の体の部分と歪が生じてくるのです。そのため、美容整形をした部分は体の変化に合わして再度処置、手術を必要とする場合が生じるのです。豊胸手術の場合などはその典型例です。何年に一度かは体の変化に合わせて胸の中に入れたシリコンパッド等を交換し直す必要があるものなのです。
入れ歯であれば簡単に調整をしたり、作り直したりすることが可能ですが、美容整形の場合は、再度体にメスを入れなければなりません。現在、安易に美容整形を行う風潮がありますが、美容整形を一度行えばそれで終わりというものではない。入れ歯と同様、定期的な体の管理、検診、場合によっては再度手術が必要であり、経費もかかるということを知っておいて欲しいと思います。
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