2008年09月23日(火) |
老夫婦を引き裂いた後期高齢者医療制度 |
自民党の総裁選挙が終わり、麻生総裁誕生となりました。当初から幹事長であった麻生氏が総裁に選ばれるためのデキレース選挙ではないかとの推測が強かったようですが、結果は推測どおりになったというべきでしょうか?民主党も小沢党首が無投票で再任されましたが、他に立候補者がいないというのも何か変な感じがしてなりませんが、全ては近くに行われる衆議院議員選挙対策なのでしょう。
さて、この衆議院議員選挙に合わせたかのように舛添厚生労働大臣が後期高齢者医療制度を全面的に見直すと発言し、物議を醸し出しています。今年4月に制度が導入されて以来、良い話をあまり耳にしない後期高齢者医療制度。以前、僕も後期高齢者医療制度について批判をしたことがあります。後期高齢者医療制度は今後確実に増えてくる高齢者の医療費を高齢者にも応分に負担してもらおうという趣旨ではあるのですが、その応分ということが実に曖昧というべきか、準備不足、説明不足というべきか混乱に混乱を重ねています。
制度としては最近になってようやく落ち着いてきたように思えていた矢先の舛添厚生労働大臣の発言。今回の後期高齢者医療制度の場合、政治的な思惑が影響し、制度を管理する厚生労働省自身が準備不足のまま4月から導入されたため、医療現場は大変な苦労を強いられました。医療側も、それから何よりも最も困惑したのは後期高齢者と呼ばれる75歳以上の患者さんでしょう。これがまた変わるかと思うと、不安でなりません。同じ新しい制度を導入するなら少なくとも監督官庁である厚生労働省や政府は細心の注意を払い、現場に混乱が起きないようにして欲しいものです。
さて、先日、お袋とこの後期高齢者医療制度について話をしておりますと、お袋がふと漏らしていた言葉が妙に記憶に残りました。
「後期高齢者医療制度はお父さんと私との間を引き裂いたのよ。」
親父は今年77歳でまさに後期高齢者に該当します。一方、お袋は今年65歳。何と一回りも年齢が違う夫婦ではあるのですが、結婚以来40年以上、夫婦として共に生活を共にしてきました。そんな夫婦の間を引き裂くとは一体どういう意味なのか?
「去年までは、お父さんと同じ保険に入っていたのよ。私はお父さんの被扶養者だったわけ。ところが、後期高齢者医療制度になると、お父さんは後期高齢者広域連合の保険組合に入り、私は地元市の国保組合へと別々にせざるをえなかった。お父さんとの仲が悪いというわけではないけど、今まで夫婦同じ保険できたのに、後期高齢者医療制度ができたおかげで無理やり分けられた。何だか国が私たち夫婦の仲を引き裂いたように思えてならないのよ。」
お袋は長年歯科医院で事務をやってきた経験から、医療制度についてもある程度精通している身です。今回の後期高齢者医療制度についても本来の趣旨は理解しているのです。ところが、そんなお袋にとって、今まで親父と同じ保険組合の被扶養者として保険があったのに、この4月から全く別の保険証になってしまうことには心情的に納得できないというのです。
今回の後期高齢者医療制度の最大の欠点がここにあると言っていいでしょう。いくら医療費の不足を高齢者にも応分に負担してもらうという趣旨は正しいかもしれません。けれども、高齢者に応分の負担を強いるということは人生の先輩である高齢者の尊厳を害することになる。これまで国を支えてきた高齢者に対し、恩を仇で返すような制度というのは、やはりどう考えてもおかしい。理屈ではない感情の問題かもしれませんが、後期高齢者医療制度については非常に大きな欠陥を抱えている制度であることには僕も異論はありません。
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