歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年05月27日(火) おばあさん(おじいさん)、何回言ったらわかるの?

「おばあさん、どちらにお住まいですか?」
「はぁ?」
「おばあさん、お年はおいくつですか?」
「はぁ?」
「おばあさん、綺麗ですね。」
「有難う!」

高齢のおばあさんと若い人との会話の一部です。何かテレビや劇場で見るコントの一場面のような感じがしますが、実際に某所で僕が目にした光景です。高齢の方に対していろいろと質問をするものの、聴こえているのか聴こえてないのかわからないような答え方をするのに、実際に自分が褒められる言葉を言われると直ぐに反応する。
この場面、思わず笑ってしまいそうですが、高齢の方とのコミュニケーションを図る時の難しさを表しているように思えてなりませんでした。

僕の地元歯科医師会では、定期的に一般市民向けに歯や口の健康講座を開きます。この講座に参加される方は、60歳以上の高齢の方が大半を占めています。
この講座では、最後に参加者から質問を受け付けるのですが、毎回受ける質問にはある特徴があります。それは、講演の内容そのものに対して質問は限られており、多くの質問が自分の歯や治療に対するものであることです。司会者が事前に
「今日の講演に対しての質問はありませんか?」
と言っているにも関わらずです。

実際に健康講座に足を運んで下さる高齢者というのは、自分の体、歯や口の中に関心があることは明白です。そんな高齢者でさえ、自分と直接関係の無い、自分の問題と直結しない話題に対しては理解しようとしても理解できない。そんな人が多いのが実情なのです。
よく高齢になればなるほど子供返りすると言われていますが、これは一理ある、いや二理、三理もあると僕は思います。

最近、後期高齢者医療制度に対する批判が相次いでいます。国会では野党が後期高齢者医療制度廃止法案を提出し、参議院で審議が開始されようとしています。これに対し与党と厚生労働省は見直すべきは見直すが、廃止法案そのものは認めない姿勢を崩していません。そんな与党や厚生労働省も後期高齢者医療制度に対して実際に対象となっている75歳以上の高齢者に対して説明不足であったことは認めており、今後更なる説明をしていくという方針なのだとか。

高齢者、特に75歳以上の後期高齢者と呼ばれる方は、実に様々です。元気はつらつ、足腰もしっかりし、頭脳明晰な高齢者がいると思えば、一見するとしっかりしているようでも実は認知症であるような高齢者がいます。また、長期療養のために寝たきりになったり、身寄りが無く、毎日食べていくのも大変な高齢者もいます。これら様々な後期高齢者と呼ばれる方に後期高齢者医療制度を周知していくというのは非常な困難を伴うと思うのです。

冒頭で書いた例のように、高齢者というのはコミュニケーションを取るにも一苦労である場合が多いもの。中でも後期高齢者と呼ばれる方に対し、後期高齢者医療制度を理解させ、年金から保険料を天引きすることを承知させるには、ちょっとやそっとの説明では話になりません。
僕自身、医療の現場で高齢者の人に治療の説明をするのですが、口を酸っぱくするくらい説明しても、まだ理解してもらえない場合が多いのが実情。
手を変え、品を変え、最低10回は説明するくらい気概をもって行わないと、後期高齢者医療制度を対象者に周知させるのは困難ではないかと思う今日この頃。


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