2007年07月18日(水) |
しばらく見ないうちに大きくなって・・・ |
「先生のお子さん、しばらく見ないうちに大きくなって・・・」
発言の主はNさん。Nさんは長年うちの歯科医院にかかっている患者さんの一人です。Nさんはうちの歯科医院の玄関に入った時、玄関先で遊んでいたチビたちの姿を見かけたそうで、以前のチビたちとの違いに驚いたようなのです。
「上の子どもが9歳で小学校3年生、下の子供が6歳で幼稚園の年長ですよ。」 「もうそんなに大きくなったのですな。ついこの前、上のお兄ちゃんが幼稚園に入園したという話を聴いた記憶があったんだけど・・・。時間の経つのは早いものですな。」 「そういうNさんのお孫さんもそうではないですか?最近、ご無沙汰ですけど、お孫さんがむし歯の治療にうちの診療所の通っていたのは幼稚園の時だったでしょう。歯の治療が怖かったみたいだけども、泣かずに一生懸命口を開けていた姿は何ともかわいいものがありましたよ。」 「あの子ももう小学校6年生ですわ。小さい頃は、乳歯に虫歯ができて先生に世話になったのですけど、そんな乳歯も全部永久歯に生えかわったみたいですよ。」
月並みなことですが、他人の子供の成長は早く感じます。新陳代謝の激しい子供たちは毎日少しずつ体が変化しているもの。その一方で、周囲の大人たちの記憶は過去の姿にとらわれてしまいがちで、現実の子供の成長についていけない側面があります。子供の実際の成長と子供に対する大人のイメージとのギャップ。思わず、
「しばらく見ないうちに大きくなって・・・」 という言葉が出てくるのも無理が無いところがあります。
この“しばらく見ないうちに大きくなって・・・”というフレーズ。 先日、僕は思わぬ場面で口にしてしまいました。
ある講演会に参加した時のこと。僕の席の隣にある男性が座りました。なかなか恰幅の良い男性だったのですが、以前にどこかで見たことがあるような顔をしていました。 “一体どこで会ったかな?” 僕はもしかして?と思い、隣の男性に声を掛けてみました。
「もしかして、Y君じゃない?」 「あれっ、そうさん先生じゃないですか?お久しぶりです。お元気そうで何よりですね。」
僕の隣に座っていた男性は大学時代の後輩のY君だったのです。学生時代、親しくしていた後輩のY君でしたが、実際に再会するのは10年ぶりでした。どちらかというと童顔だったY君ですが、顔だけでなくお腹周りもかなりの肉がついていました。そのため、僕は直ぐにY君だとはわからなかったのです。そこで思わず僕は言ってしまったのです。
「それにしても、しばらく見ないうちに大きくなって・・・」
Y君、思わず笑いながら 「食事量が増える一方で運動不足でしょ。あっという間に体重がふえますよ。メタボリックシンドローム一直線ですよ。しばらく見ないうちに大きくなるわけですよ、ハッハッハ・・・。」
このように冗談をうまく切り返してくれる人の場合はいいですが、時には冗談では済まされない場合もあります。
以前、僕は某デパートで買物をしていると、後ろから声を掛けてくる女性がいました。
“一体誰だろう?どこかで聴いたことがある声だけども” そんなことを思いながら振り返ったのですが、僕は声を掛けた女性が誰だか直ぐにわかりませんでした。
「私よ、S子よ。」
僕は思い出しました。僕が某歯科大学学生時代に実習のパートナーだったS子さんだったのです。学生時代は常に一緒に実習をしていたS子さんでしたが、大学を卒業後、彼女は直ぐに結婚し、二人の子供の母親になっていたのです。そのため、彼女とは会う機会がなかったのですが、偶然にも某デパートで十数年ぶりの再開となったのです。 なつかしいS子さん。思わず僕は言ってしまいました。
「S子ちゃん、しばらく見ないうちに大きくなって・・・。」 「・・・・・・・」
しばしの沈黙。二人の子供を持つ母親となったS子さんは学生時代の時に比べ、体格が一回りも二回りも大きくなっていました。それは事実だったのですが、S子さんは体重が増えていることを気にしているようだったのです。彼女の顔からは笑顔が消えておりました。 その後、彼女の機嫌を取り戻すの四苦八苦したのは言うまでもありません。
「しばらくみないうちに大きくなって・・・」
TPOと相手のことを考えながら言わないと、とんでもないことになることを思い知った、歯医者そうさんでした。
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