| 2007年02月06日(火) |
社会インフラと健康に共通するもの |
昨夜、一日の診療を終え自宅に帰ると、一足先に帰っていた親父がこの番組を見ていました。
この日のテーマは社会インフラの老朽化問題。最近、北見市で起こったガス漏れ事故での原因も、かつて敷設された鋳鉄製ガス管の腐食が原因であることがわかったのは記憶に新しいところ。かつて整備された道路や橋、下水管、ガス管といった社会インフラが老朽化し、各地で被害が多発しているというのです。 これら社会インフラの多くの中でもコンクリートと鉄筋で作られたものは、かつて永久建築物と呼ばれていたもので、一度作ってしまえば永久的に保たれるという話だったとのこと。実際はそうではないことがないことが今から30年前にアメリカでわかったそうなのです。アメリカ各地で道路や鉄橋の陥没や落下が頻発したことからわかったのだとか。 日本においては1960年代の高度経済成長期に整備された社会インフラが軒並み限界に達し、崩壊の危機に達しているそうで、各地の自治体では社会インフラの補修に苦慮しているそうなのです。 こうした社会インフラを少しでも維持させるには、新規に社会インフラを整備するよりも、新規に整備した社会インフラを早期のうちから保守し続ける必要があり、そのことが結果的に社会インフラに対するコストを下げることになるという内容でした。
このテレビを見て思ったのは、社会インフラも人間の健康とよく似ているなあということです。 人間は、健康である時は自分の体のことになかなか関心を持たないものですが、何処か体を患うと治療費用が掛かります。直ぐに治る病気であればいいのですが、大病を患ったり、慢性疾患を患うと医療費をかなり負担し続けないといけません。社会全体で考えると、大病や慢性疾患の医療費は莫大な額になります。 人間誰しも健康でありたいものですが、その健康を維持するためには、健康であるうちから病気にならないような予防が必要です。予防を進めることが、医療費のコストを下げることにも繋がるのです。
以前にも書いたことですが、日本歯科医師会では8020運動を進めています。これは80歳で20本の歯を維持できれば、一生自分の歯で食べることができまという意図で進められた運動なのですが、最近、大規模な調査で8020達成者の医療費が明らかにそうでない人に比べ低いということがわかってきました。 8020を達成するためには、若い頃からの歯の予防が大切で、定期的に歯科医院を受診し、歯が悪くなる前に歯の健康チェックを受け続けることが必要です。こうした若い頃からの心がけが結果的に8020となり、歯だけでなく体全体に掛かる医療費を抑制することに繋がるのです。厚生労働省もこの8020に重大な関心を抱き、今後の政策の中に8020を入れることを真剣に検討しているのが現状ですが、その背景には少しでも増え続けている医療費を少しでも抑制したいという本音があるのです。
社会インフラをめぐる状況と医療費をめぐる状況は極めて似かよっているのです。少しでも長く維持、機能するためには早期からの保守維持、疾病予防が必要であり、そのことがコストを下げる。 一見すると社会インフラと健康とは関係のないようなものかもしれませんが、大いに共通点があるものだと感じた次第。 社会インフラと健康の二つの共通点だけで判断することは無理があるかもしれませんが、世の中に存在するものは最初から大切に丁寧に扱うことが長持ちすることかもしれないなあと感じた、歯医者そうさんです。
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