2006年06月16日(金) |
学校歯科検診よもやま話 その1 |
現在、日本全国の保育園から幼稚園、小学校、中学校、高校に至る学校では授業の合間をぬって様々な体の検診が行われています。内科検診、眼科検診、視力検査、耳鼻科検診などの中に歯科検診も行われています。
皆さんもこれら検診を受けてこられたことでしょう。この検診ですが、どうして、4月から6月に至る時期にこれら検診が集中して行われるかご存知でしょうか?それは、これら検診を行う時期が法律によって定められているからなのです。学校に通う生徒たちの健康、保健管理について定めた法律に学校保健法という法律があります。この法律では生徒たちの健康状態を把握するために、各学年6月30日までに検診を行わないといけないように定めてられているからなのです。そして、その検診の詳細については学校保健法施行規則に項目が定められており、その中に歯および口腔の疾患および異常の有無について規定があるのです。
歯科検診では、以前であれば口の中の状態だけを調べていました。歯の数、むし歯や歯周病の状態、乳歯と永久歯の生え変わり状況などをチェックしてきたわけですが、今では口の中を診る前に顎関節の雑音や動きの異常の有無、かみ合わせ、歯並びのチェックを行います。これらの状態を異常なしの0、要観察の1、歯科医院での精査の必要ありの2というように3段階で調べるようになっています。そのため、口の中を検診する前に、検診担当歯科医は必ず”0000”とか”012”とか言うことがあるのですが、これら数字は顎関節や歯のかみ合わせ、歯並びの検査結果を言っているわけです。
僕自身、生徒であった時期には歯科検診を毎年受けてきた経験者の一人であるわけですが、歯科検診を受けていた際疑問に感じていたことがありました。それは、以前の検査でむし歯と判定されたにも関わらず今回は異常無しと判定されたことでした。むし歯というのは勝手に治るものかと疑問に感じたものです。
現在、歯科検診医として検診をするようになった歯医者そうさんですが、その立場から言わせてもらうと、むし歯というものごくごく初期のむし歯でない限り自然に治るということはありえません。初期むし歯というのは歯の表面がやや白っぽくなった状態を指すものであり、実際に歯に穴が状態は初期むし歯ではなく、むし歯が進行した状態なのです。こうなってしまうとむし歯は自然に治ることはないのです。ところが、歯科検診ではむし歯が勝手に治っているという判定が結構出ている。この矛盾はどこにあるかといいますと、いくつかの要因がありますが、基本的には歯科検診医の判定基準の微妙な違い、見落としが判定の違いを生むのです。
歯科検診は体育館や教室の中で行われるものですが、口の中を診るのにこれら体育館や教室の中というの暗すぎるのです。明るさを示す単位としてルクスという単位があるのですが、体育館や教室で必要な明るさは100〜300ルクスと言われています。ところが、口の中を診るには3000ルクスの明るさが必要とされているのです。実際の歯科検診では口の中を診るために側にライトを置いて診るのが普通で、僕自身、それ以外にLEDライトを持参し、口の中をなるべく明るくしながら検診しているのですが、実際の診療室のように正確に検診できているかどうかというと、明るさという点からみれば自信がないのが現状です。
検診は一度に多くの生徒たちを限られた時間内で検診しないといけません。そのため、検診はふるいわけ検査、スクリーニング検査とも言われているのですが、じっくりと時間をかけて検診できない以上、どうしても検診の誤り、誤差というものが生じざるをえないのです。歯科検診医は誰しも正確に検診していこうとは考えてはいるのですが、限られた時間内に検診するという性格上、どうしても検診の誤差というのは避けられないものなのです。そのため、僕は判定の微妙な場合は厳しめの判定をするようにしています。そうすることにより、詳細な検査は歯科医院を受診してもらい、何もなければそれでよし、何かあれば治療してもらうというように微妙な歯の判定を十分な診査態勢ができる歯科医院で行ってもらうように仕向けています。
続きは明日へ。
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