2006年05月17日(水) |
歯医者に似つかわしくない場所 |
先週末、僕は母校の歯科大学の同窓会地元支部の集まりがあり参加してきました。例会の後、懇親会というお決まりのパターンなのですが、その懇親会の席上、僕はある先輩の先生と同じテーブルで隣同士になりました。その先輩の先生とはA先生。A先生は齢70歳近い先生で、僕にとって大先輩に当たるのですが、僕が幼少の頃から世話になった先生だったことから気兼ねして話をするどころか、数年振りにお会いしたことからいろいろと話が弾みました。
実はA先生に関して、僕は以前から気になることがありました。それは、A先生の姿を地元のスーパーやデパートでお見かけしたからでした。それも一度や二度ではありません。僕が嫁さんと買い物していた時には必ずと言っていいほどその姿をお見かけしていたのです。いつも、買い物袋を下げ、時にはお孫さんを連れながら食料品売り場をうろついているA先生。しかも、A先生は奥さんと一緒ではなく、お孫さん以外はほとんどお一人だったのです。僕はA先生の姿を目にする度挨拶はしていたのですが、それにしても買い物客層の大半が主婦という食料品売り場で70歳近いA先生が一人で買い物をされている姿には疑問を感じざるをえませんでした。何か家庭に事情があることは間違いなかったのですが、そのことを直接伺うわけにもいかず、今まできていたのです。
そのような疑問が解ける時がやってきました。今回の同窓会の懇親会の席上、僕はA先生に地元のスーパーやデパートで何度かお会いしたことを話していましたが、その際A先生や僕と同じテーブルにいたH先生が会話に加わってきたのです。
H先生はA先生声を掛けました。
「そう言われれば、わしもA先生を○○スーパーで何度も見かけたよ。A先生にはふさわしくない場所でね(笑)。どうして先生に似つかわしくない場所でうろついているんですか?」
A先生曰く
「別に隠すことでもないんだけど。実は、家内は数年前からある足の病気で歩行が困難な状態なんだよ。家の中にいる時も装具を身につけないと歩けないくらいなんだ。家事をするのも一苦労なんだよ。ましてや外へ買い物となるとだめでね。そうすると家の中で外へ動けるものといったら俺しかいないんだよ。息子や娘たちも遠くに住んでいるからいつも手伝いに来てとも言えないしね。家内に買い物しなければいけない物をリストアップしてもらって、メモに書いたものを元に俺が買出しに出かけているというわけ。
最初の頃はね、いざ買い物に行くとなると大変だったよ。何せ、それまで家事のことは家内に全部任せていたから。野菜や果物がどこにおいてあるかどうかもわからずに苦労をしたもんだ。今となってはそれも慣れて良い気分転換みたいな感じになっている。孫がうちに来た時なんか家にずっといても退屈するだけだから一緒に連れて行くんだよ。そういったところをそうさんに見られていたわけだ。年老いた歯医者がたむろするような所じゃないかもしれないけどな、ハッハッハ・・・・・。」
70歳近い年齢のA先生は普段の診療だけでも体力的にかなり大変なはずです。そんなことはおくびにも出さず、難病の奥さんの代わりに毎日買い物に出かけているA先生。そんなA先生の姿に思わず目頭が熱くなった歯医者そうさん。どうか無理はなさらず、いつまでも元気な姿を見せてほしいと思わずにはいられませんでした。
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