歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年04月25日(火) レントゲンは体に悪くないのか?

「先生、レントゲンを何枚も撮っているけど、体が悪くなることはないの?」

先日、ある患者さんから発せられた質問です。この患者さんの場合、何本もむし歯があり、中には神経の治療を施さないといけないような歯もありました。歯の治療を行なう前、歯の状態を把握するために目で見えない部分を確認する目的でレントゲン写真は欠かせないものではあるのですが、その一方、原爆のイメージから多量の放射線を浴びると体に重大な障害が現れることが知られているためにレントゲン撮影に対し不安に感じる方も好くなからずいらっしゃるのも事実です。

果たしてレントゲンは安全なものなのでしょうか?

結論からいいますと、レントゲン撮影で使用するX線はほとんど体に悪影響を及ぼすことはありません。ほぼ安全だと言ってもいいでしょう。

自然界には目に見える可視光線以外に自然放射線と呼ばれる光、もしくは光に似た性質をもつものが多数降り注いでいます。この自然放射線と呼ばれるものは世界中の誰もが必ず浴びているもので、宇宙、太陽、大地、食べ物などから発せられているものです。場所によってばらつきはあるものの、一年間に2.4mSv(ミリシーベルトと呼びます。放射線が体に影響を与える実効線量の単位です)程度の量を誰もが浴びているのです。

一方、歯科で使用されるX線は、小さなフィルムであるデンタル型の場合、一枚あたり0.01〜0.034mSv、大きなフィルムで口全体を撮影できるパノラマ型の場合、一枚あたり0.025mSvです。自然界から否応無しに浴びる一年間浴びる自然放射線の量を歯科で用いるX線で浴びることを想定すると、デンタル型の場合は、70〜240枚、パノラマ型の場合は、ほぼ100枚分となります。正直言って、自然放射線と同じ量のX線を使用してレントゲン写真を撮影することは歯科の治療ではありえません。一年間に誰もが浴びる自然放射線の線量よりもはるかに少ない線量のX線を歯科治療では使用します。確かに、歯科治療においては、自然放射線以上の線量を体に与えていることにはなります。歯科治療におけるX線が体に悪影響を与える可能性はゼロだとは言えませんが、ゼロに近い、ほとんど問題がないと言っていいと思います。

しかも、最近ではデジタルレントゲン撮影と言って、従来のようにフィルムで用いる方法ではなく、パソコンの画面を通じて行う方法が広まってきています。この方法であれば、これまで使用していたX線量を更に下げても従来と同じ質のレントゲン写真を撮影することができます。従来のものでも悪影響を与えることがほとんどなかったレントゲン撮影のリスクを更に下げることができるのです。

レントゲン撮影で用いるX線は目に見えるものではありませんから、目に見えないものに対する不安、恐怖は人間なら誰しも感じて当然だと思いますが、上で書いたように歯科治療で用いるX線量は極めて少なく、限られたものです。レントゲンは決して怖いものではないことを理解して頂きたいと思います。


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