My life as a cat
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2023年06月28日(水) ママを交換

夕飯の準備をしてると、背後で近所の子供達がうろちょろしてる。みんな日本や日本食やポップカルチャーに興味津々。母が日本から孫にと送ってくるすみっこぐらしの絵がついたふりかけを女の子達がカードのようにその辺に広げて、中に入ってたステッカーを奪い合いしたりしてる。醤油と砂糖とバターでカラメルポテトを作ってたら、その香りに釣られてみんなキッチンに集合してしまった。1個だけよ、とあげたら美味しい!!!お願い、もう1個!!!などとみんな目を輝かせて食べてる。出来上がったおかずをいちいちこれはなんだと聞いてくる。ロクちゃんとわたしが庭で夕飯を食べてる間、子供達もまだその辺で遊んでる。お母さん達がちょっと怒った顔で迎えに来る。

「もう家に帰ってシャワー浴びて夕飯食べる時間よ。帰ってきなさい」

「え〜!もう少しだけここにいてもいいでしょ〜」

10歳の子供達はお母さんの言う事は右から左に流して、言うことをきかない。お母さん達も諦めて帰っていく。2歳のロクちゃんもわたしの言う事なんて全く聞かないけど、あともう少ししたらちゃんとできるようになるなんて思ってたのは間違いなんだろうか。隣の家のレアは大人しくて本当に育てやすい子だったらしいが、今になって難しくなってきたと隣人が話してた。確かに、今も大人しくて口ごたえしたりはしないけど、かといってお母さんの言う事なんて聞いてない。

「ねぇ、レア、そろそろ家に帰ったほうがいいんじゃない?ママ待ってるって言ってたじゃん」

「え?そう?どうかな?」

ってな具合。

子供達がこんな会話をしてた。

「わたしスシ大好き!スシにたっぷり醤油かけて食べるの!!!」

「わたしはチキンのスシがいい」

「毎日日本食いいなぁ」

「そうだ、ママを交換すれば毎日日本食食べられるね」

「きゃはは、それいいアイディア!」

そんな風に言ってもらえるのは嬉しい反面、この言葉はわたしの胸にズキンときた。ロクちゃんはまだ喋らないけど、喋れたらなんと言うのだろうか。彼女達のお母さんは仕事をしてて、料理などに割く時間はそう持てない。いつも学校から戻ると市販品のお菓子を食べながら遊んでて、ちょうど焼き上がったクッキーなんかをあげると目をキラキラさせて美味しい、美味しいと食べてる。レアのお母さんは夫がアル中で、レアを産んですぐに職場復帰した。選択肢はなかった、と言ってた。レアが物心ついた時にはお父さんは別の女の人と再婚してて、半分血の繋がった弟が出来たけど、その弟は遠くに住んでて滅多に会えなかった。そのうちまたお父さんは彼のアル中が原因で離婚、治療のために施設に入って過ごすことになった。弟は母親に引き取られ、更に遠い存在となった。そんな揺れ動く大人のごたごたの中で彼女なりになにかを抑えて生きてきたのかもしれない。今になって反動がきたかのように、最近は娘を叱りつける隣人の声をよく聞くようになった。わたし自身がそうだったように、子供が親の大変さを理解するには時間がかかる。ロクちゃんに感謝して欲しいなんて思わないけど、ママを交換したいなんて言われたら辛い。大袈裟な意味もなく発せられた子供達の言葉が、指に刺さった小さな棘のようにちくりちくりとわたしの胸を刺している。


Michelina |MAIL