My life as a cat
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2019年08月15日(木) The Shape of Water

ビーチで恋に堕ちる。あの人は人魚だったのかもしれない。人魚といったら美しい女性を真っ先に思い浮かべる人が多いのだろうが、その人は男性でもそれはそれは美しい雰囲気だったのだ。夕暮れ時いつもと違うビーチへ繰り出した。国境をほんの数メートル超えたイタリアのビーチ。友人が"Rock"と呼ぶこのビーチは岩がごつごつ。みんなオットセイのごとく岩の上にごろごろと寝転がって、気が向くとそのまま水にジャンプしている。水にジャンプして入るのはいいが、水から上がる時がなかなか難しい。うまくどこかに手をひっかけてよじ登ろうにも足をひっかける場所もぬるぬると滑る。一度目はなんとかひとりでよじ登った。そして二度目。前にダイビング・スーツを着た男性がいて、彼がよじ登るのを背後で待っていた。なんとかやっとよじ登ったその男性がこちらを振り向いて、にこりと笑いながらわたしに手を差し出したのだ。すっとした目鼻立ちで細身の長身。彼の背後に夕陽があって、彼の長めの髪が金色に照らされて輝いていた。岩の上にかがんで手を差し出す彼の姿があまりにも美しくて、一瞬くらりとして、そのまま水に潜ってしまいそうになった。手を掴んでひょいっとひっぱってもらうと、簡単に水から上がることができた。

"Merci, Grazie"

どこの人なのかと思いながらお礼を述べるとにこりと笑った。全てが夕陽の色に染まっていて、その人の目の色も髪の色も知ることはなかった。少し歩きだしてから振り返ると、もうその人の姿は消えていた。わたしは岩に寝転んで、しばらくその情景と握った手の感触を思い出してぼんやりした。この一瞬の出来事は夕陽に染まるこのビーチの風景と共に強く記憶に刻まれたのだった。

陽がすっかり沈む頃、ビーチに現れた大きな満月の迫力に感激して、ビーチを臨むテラスで夕飯を食べていたら、向こうで花火も始まった。日本と同じでこの花火を境に少しずつ夏が終わっていく。夏の日々があまりにも美しくて、もっと長続きしてほしいと願うのに、季節は無情にどんどん前に進んでいく。


Michelina |MAIL