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2019年07月20日(土) |
43歳のタルト・トリペツィエンヌ |
誕生日は国境を越えてイタリアへ入り、いつものお気に入りのレストランでランチを食べて、海で泳いだ。そして夜、明日のわたしのためのバースデーランチ作りにキッチンで格闘するリュカを横目にカウチでひとりで映画を楽しむ。"Green Book"という実話ベースの作品。黒人差別を題材にしたものは過酷なものが多いけれど、これは"Intouchables(最強のふたり)"を思わせるようなハートウォーミングストーリーだった。荒廃したブロンクスでワイルドに生きてきたトニーが、ドクターの奏でる美しい音楽に魅了され、少しずつ彼をリスペクトするようになっていくのがよかった。出身や人種を超えて音楽で繋がるってとても素敵だ。品よく育てられたドクターも躊躇いながらも手を油でギトギトにしてフライド・チキンを食べる愉しみを知ったり。歩み寄るって素敵なこと。先日こんなことがあってそこに深く感じ入った。料理のアトリエで、わたしが講師となった時のこと。いつも大雑把でなんでもボウルに投げるように入れてしまうマダム達が、わたしが作ったレシピ通りに面倒な作業をちまちまとやってくれた。
「あなたは完璧にやりたい人だから、完璧なレシピに従って完璧なものを作るわ」
と冗談めいて笑っていたけど、わたしは本当に嬉しかった。いつもきっちりとしたレシピを作っても省略されてしまったり、どうしてそれをやることが大事なのかと説明したくても言葉がままならなかったりで、わたしが大事にしているところはいつも踏みにじられていた。約2年一緒に料理をしてお互いに少しずつ相手の力を注いでいるところが解ってきたのかもしれない。歩み寄ることの大切さを知って、わたしだって、マダム達の大らかさを受け入れていくべきなんだと深く反省したのだった。
そしてリュカ作のランチ。
アントレはスペインのバルで人気だというタパス。焼いたバゲットにコンデンスミルクを塗ってその上にアンチョビ。甘塩っぱくて和食に通づるものがある。でもやっぱり醤油と砂糖コンビには勝てないだろう。
メインは"ピスト・マンチェゴ"。これはオリーブなしのラタトィユかカポナータと同じかな。鍋一杯作ってくれたからこの先一週間は料理しなくても良さそうだ。それにしても野菜の切り方がすごい。きれいに真四角。年に一度しか料理しない分、そこに費やすエネルギーは膨大なのだ。
そしてデザートはわたし達の大好物、南仏サント・ロペ名物のタルト・トロペツィエンヌ。材料がシンプルなだけに配合次第ですごく味に差がでる。パーフェクトなレシピを見つけるのは簡単ではない。はじめてにしては上出来。次回はわたしが違うレシピを見つけて作ってみよう。
妹からは姪っ子のビデオが届いた。2年前は歩きも喋りもしなかったのに、歌ってるよ。わたしのためにケーキを買って、そして家族みんなで食べたそうだ(笑)。
こうして大した怪我も病気もなく至って健康で43歳になることができた。両親もたったひとりの妹も、愛猫も夫も健在。感謝の気持ちでいっぱいだ。