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「フォンデュをしましょう」
寒い寒い夜、クリスティーヌ宅に集合。フォンデュというものをよく知らないわたしは、軽くパンを持っていくなどと言ったのだが、妙にクリスティーヌが心配そうに聞いてくるので不思議に思っていた。想像では切った野菜やパンをチーズに浸して食べるものだったのだが、いつまで経っても野菜がでてこない。聞けば"Fondu Savoyarde"とはパンとチーズが主役のものだというではないか。ということでパンが重要な位置を占めているのだ。この料理の発祥の地は冬があまりにも厳しく野菜が採れない。だからチーズに雑穀の入ったカンパーニュなどを浸して食べるんだそうだ。付け合わせのパンくらいに考えていたのだが、たまたま気が向いて色んなパンを焼いていったのでおなかを満たすことはできたのだが。カンパーニュは少しだけ、あとはインドのパラタとか中国の花巻とか、マルチカルチュアルなフォンデュとなった。
赤ワインと楽しい会話でたちまち体も温まってきた。どこへいても冬になると日本が恋しかった。コタツ、湯船、温泉、鍋、酒、正月。でも今夜はそんな気持ちも忘れた。ここにはここの冬の愉しみがある。デザートにタルト・オ・ポワールを食べ終えて、クリスティーヌが聞く。
「みんなカフェ飲むよね?」
うん、飲む。
「ドミニクは?」
「夜はカフェ飲まない」
「デカフェもあるよ」
「要らない」
「お茶は?」
「・・・。もっとワイン飲む」
彼のひとこえでさらにもう一本ワインの栓が抜かれ、乾杯しなおしたのだった。
クリスティーヌの小さなサロンで小さなテーブルを囲んで身を寄せ合って過ごす冬の夜は何物にも代えがたい至福の時間だった。