My life as a cat
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2018年06月02日(土) 二度とない時

隣人のマクシムが亡くなった。享年84歳。軽度のアルツハイマーを患っていたものの体は丈夫で、日に2度の犬の散歩と3度ブーランジェリーまでバゲットを買いに行くのが彼の仕事だった。家では妻のマリー・ルイーズがいかにもフランスというようなバターの香りを漂わせて料理していた。昨年末マリー・ルイーズがインフルエンザで倒れた時は彼が看病し、そのうち彼も倒れた。回復してからは、一時も離れたくないというように仲良く腕をくんで歩く夫婦の姿を見るようになった。春がやってきて、ふたりの愛犬が死んだ。年老いてワンともいわない気配の静かなチワワ。夫婦はこの犬がいつもいたカウチに代わりにチワワのぬいぐるみを置いた。数週間前、マクシムは膀胱の手術を受け、帰宅して処方された薬を飲んでいた。天気の良い昼下がりマリー・ルイーズは中庭にチェアを出して読書する。マクシムは隣に座って日光浴する。2週間前、薬が強すぎてマクシムは意識が朦朧として転倒し、脇腹の辺りを強く打った。それが化膿し、命取りとなった。

2週間前まで歩いていた人の魂は今日はもうこの世に存在しない。約半年前ここに越してきてから毎日見ていたそろりそろりと歩く老人と老犬は揃ってこの世からいなくなった。まったく想像していなかったから茫然とするしかない。この世に永遠に続くことはひとつとしてない。一時一時を大切に生きなければ。改めて痛感させられる出来事だった。


Michelina |MAIL