My life as a cat
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2018年04月09日(月) 迷路の国の郵便事情

婚姻手続きの書類作りは日本の家族をも巻き込んで蜂の巣をつついたような騒ぎ。自分のことでも面倒になるようなことばかりなのに、それを自分以外の誰かのために奔走してくれている家族には本当に感謝している。迅速で律儀に機能する日本の郵便事情やお役所の仕事ぶりにも。コンビニで書類をプリントアウトできるというサービスはとても便利だ。こちらで作成した書類をコンビニのサーバーにアップロードし、日本の家族にプリントアウト番号を知らせればできてしまう。滅多に使わないのに場所をとる家庭用のプリンタなど所持せずにすむ。戸籍謄本と改製原戸籍には外務省のアポスティーユという証明書を付箋してもらう必要がある。この申請の仕方は周到にウェブサイトに記載されているので、しっかり読めば問題なく理解できる。本来それが当たり前としてもフランスのお役所はそうなっていない。知る人ぞ知るようなやり方で申請し、担当者によって必要書類が変わる。日本の家族にやってほしい作業を事細かに書き出して指示する。翌日には封筒に収まり発送。郵便は確実に外務省に届き、さらに1週間ほどで外務省アポスティーユを付箋された書類が実家に返送された。さすが早い。

さて、アポスティーユも取れた。で、問題はここからだ。この書類は郵便で送ってもらう以外にない。心配なフランスの郵便事情。わたしはLa Posteを利用して何かを送ったり受け取ったりしたのは合計すれば30回程度だろう。そのうち一度だけ郵便を持ち帰られた以外は無事だった。だが郵便が届かないとかいう話はよく耳にする。″フランス人はバカなのか″と詰る声も。しかし、住んでみて思う。こんな町の構造でどうやって郵便配達やってるんだ!?と。わたしの住居ひとつとってみても非常に複雑な作りとなっている。住所は通りの名前と番地のみ。部屋番号はない。建物の入口にポストが並んでいて居住人の名前を各自勝手に書き入れている。しかし、その建物の入口さえどこにあるのかよくわからない。建物内自体が迷路のようだし、ユニットの形も全部違うし、部屋の形も全てがいびつ。バルコニーへ出て下を見下ろすと階下の家のバルコニーが見える。いつも綺麗に花が飾られている。一度ランチマットのパン屑をバルコニーではたいていて手を滑らせて階下のバルコニーに落としてしまった。階下の家のドアをノックして謝って取ってもらう以外にない。が、ここで階下の家のドアがどこにあるのかわからない。そもそも同じ建物でもユニットによって入口が違うのだ。そこらへんを歩き回って入口を探した。やっとそれらしき入口を見つけたものの、暗い通路からは方角が解らずどれが階下の家かわからない。30分ほど彷徨って結局諦めて家に戻ろうとした時、風でわたしのランチマットが通りに飛ばされて落ちているのを発見したのだった。

リュカの職場の隣のマーケットでいつも買い物をする。ふとレシートを見てぎょっとする。このマーケットの住所がリュカの職場とぴったり同じなのだ。配達人はどうやって配達物がリュカの職場宛てかこのマーケット宛か知るのだろう。働いている人の名前を知らない限り届けられないだろう。

こちらに越したばかりの時、自宅に宛てられた移民局からの大事な書類が宛先不明で持ち帰られてしまい移民局が親切にも電話をくれたことがあった。かと思いきや、もっと驚くようなことも起こった。母が大きなダンボールに沢山食べ物を詰めて船便で送ってくれた。もちろんわたしの名前と自宅の住所宛てで。船便でも最近はLa Posteのウェブサイトで追跡が出来る。2か月経った頃見てみたらちゃんと細かく履歴が更新されていて、フランスには到着しているということが判った。その数日後、リュカが大きなダンボールを抱えてへぇへぇ言いながら仕事から帰宅した。

「君のママから届いたよ」

「なんで!?どうしてわたしの名前と自宅の住所に宛てた物がであなたの職場に届いたの????」

「そういえば・・・・そうだね。あっ、郵便局の人は僕のこと知って、更に日本人と住んでることも知ってて、更にいつも家に不在なのも知ってるのかもね」

It's a small world!!!
La Posteは謎だらけなのだった。

大きな都市へ行けば防犯のためだろう、門にキーがかかっていてキーコードを知らずには開錠できないような家も多い。郵便配達人がそのキーコードを知っているパターンもあれば、知らずに荷物を持ち帰ることもあるという。

わたし達の部屋は通りに面しているから、たまに知人と通りを歩きながら″あそこがわたしの家です″という会話をする。しかし、そう教えただけでわたしの家の建物の入口を見つけ、またユニットの入口まで辿り着ける人はそういないだろう。引越しの荷物をデリバリーする現地の業者から電話でこんな質問をされたことがある。

「あなたの家は何階ですか」

この質問には困った。

「何階かと言われても、、、、フランス語で言うところの2階だと思うけど、、、通りの一番低いところから数えて3段目。ひとつ言えることは建物の入口から階段を上がって中庭に出て更に階段を上がるんでドアツードアのデリバリーはかなり大変だということです」

しかしこの回答であちらは解ったらしい(ともあれ、″大変だ″と教えたのに、当日ドライバーたった1人送ってきて、結局1人では運べないものばかりでリュカが手を貸す羽目になりそれで仕事に遅れるといういい加減なフランス節展開となったのだが)。

フランスの町や住居の構造はとにかく複雑だ。そう思うのはわたしのような外国人だけでフランスで生まれ育てばなんとなくパターンがあって想像ついたりするのだろうか。いや、でもそうでないから郵便配達の人々が該当住所に辿り着けず郵便物を持ち帰ってしまうということが頻発しているのではないか。それとも郵便配達員はフランス人でないことが多いのか。わたしは階下の家にすら辿り着けなかったのだ。そう考えると郵便が届くことのほうがすごいことに思えてくるのだった。


Michelina |MAIL