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2018年03月11日(日) |
初めてのヴァロリス、二度目のエズ |
パブロ・ピカソが影響を受け、また衰退の一途を辿っていたところを救ったともいわれる陶芸の町ヴァロリス (Vallauris)を訪れた。遠い昔、いつか訪れようと思った場所だった。昨夜の食卓で、わたしは陶芸など見て歩くのが好きで食卓で使っている食器もアーティストに直接会って購入したものが多い、などと話したところから転じてチャンスを得たのだった。楽しみであれこれと事前に調べていたのにも関わらず、いちばん肝心なことを全員忘れていた。今日は日曜日だ。ヴァロリスに到着してぱったりと静まり返って人影もない町を見て、それまで騒々しかった車内は一瞬にして静まりかえった。みんなお腹が空いていたので辛うじて店を開けていたブーランジェリーで軽食を摂る。そして辛うじて店を開けていたお店を覗いた。ラヴェンダー、ミモザ、トマトにオリーブと南仏モチーフが手描きされたここの陶器は見た目とは裏腹になかなか軽かった。
午後、エズ(Èze)に移動する。とりあえずと入った村の入り口のカフェで窓際に席を取る。目の前には2年前宿泊したホテルが見える。あぁ、あの窓からこのカフェで食事する人々を眺めて夜を過ごしたなぁ、と懐かしく思い出す。2年後そのカフェに腰かけて、逆にホテルを眺めているとは想像していなかった。人生はわからないものだ、とつくづく思う。日本人はエズが好きだ、とフランス人が言うが、本当に日本人だらけ。カフェでわたし達の隣に日本人のカップルが座っていた。彼らはウェイターがコーヒーをサーブしてもカップをさげにきても目も合わせずお礼の一つも言わない。フランス人はサービスがなっていない、と日本人はよく言うが、逆にサービスする側のフランス人はこう思っているのではないか。″日本の客は挨拶もせず失礼だ″。フランスでは挨拶せずに店に入る人も、挨拶なしに出ていく人もいない。客は受けたサービスに関しては必ず律儀に″Merci" とお礼を述べる。日本と違って大型コンプレックスのお店よりも圧倒的に個人商店のような小さな店の立ち並ぶフランスでは挨拶なしに他人のプロパティにずかずか足を踏み入れるのは憚られるのではないのだろうか。外国人というだけで目立ってしまうようなところに住んでいるわたしは日本人らしき人を見かけるとむしょうに懐かしくなって話しかけたいような衝動に駆られるのだが、今日ばかりはそれとなく自分は日本人ではないというフリをしてしまった。
朝からの土砂降りの雨でエズは霧に包まれていた。初めて来た時はからりと晴れた夏の日だった。この霧がエズを一際中世の村に引き立てていて神秘的で悪くない、とう意見で全員一致した。