My life as a cat
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2018年03月07日(水) 笑顔の証明写真

先週ずっと降り続いた雪が止み久々にからりと晴れた、と思ったら風もすっかり春のように暖かい。クロエちゃんと中庭に飛び出し日光浴をした。雪だ、雪だ、と嬉々として歩き回っていたのは最初の3日間だけ。次第に顔色が冴えなくなり、体が怠くなって無気力になった。熱波だの寒波だのは病人や老人にとどめをさす。欧州ではこの寒波で60人死者がでたそうだ。

結婚の書類収集。証明写真を作ろうとカメラをリュカに向ける。ファインダーを覗くとなぜか歯を見せてさわやかな笑顔を作っているではないか。

「なんで!」

「え?何が?」

「ちゃんとしてよ」

「ちゃんとしてるよ」

「ちゃんと口閉じて」

「なんで?真顔で撮るなんて変じゃない?」

まさか冗談だろうと思ったが本気だった。今までずっとそれで問題なかったという。

「絶対嘘!」

「嘘じゃないよ。ほらねっ」

と見せられたパスポートと身分証明書には白い歯を見せてにっこり笑っている彼がいた。どこで覚えたのか証明写真は口を閉じて真顔で写るのが当たり前と思ってきたわたしは面食らった。その後ネットで証明写真の撮り方を読んでいた本人が悲しげな声で呟いた。

「そうかぁ。口を閉じて撮らなきゃダメなのかぁ」

そうでしょうともよ。あぁ、驚いた。

この国では結婚も離婚も面倒ごとが多い。結婚ならまだ希望に胸を膨らませテンション高く仕上げてしまうこともできるだろうが、離婚となるともう面倒な後始末のような気がしてきてしまうことだろう。以前、ちゃんと離婚もしてないのにデートに誘ってきたりする男の人はだらしない人間だと思っていた。しかし、ここに住んでみるとなんとそんな人が多いことか。ちゃんとした社会人で、とっくに別居して関係の終わったパートナーと書類上結婚したまま新しいパートナーを作っている人なんてざらにいる。自分のこととして考えてみればやっぱり書類上だけでも″既婚者″と付き合うのは抵抗があるし、国の事情がどうであれ、ちゃんとしたい人はちゃんとするのだろう。しかし、こういった煩雑な書類上の手続きがあり、放置したままにしてしまう人がさほど珍しくないという背景があることを知って少しだけ考えが変わった。


Michelina |MAIL