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叔母が毎年お正月にくれる卵。今年初めて知ったのだが、わたしが近所のスーパーマーケットで見つけられないと嘆いていたフリーレンジの卵だったらしい。祖父の家の近くの農家が小さな直売所で売っている物なのだそうで、1個40円とのこと。身動きの出来ないゲージで1日中ライトを浴びさせられて卵を産み続けている鶏ではなく、大きな庭を走り回っている鶏を想像しながら卵を食べられるのならこの価格は惜しくない。ただ、祖父の家がそう近くないことが問題なのだが。この卵の黄身の色は本当に自然な黄色で、あれこれと餌に細工をしたりして不自然に作り上げた濃い黄色などではない。
さて、良い卵をもらうと食べたくなる料理はこれ。渡辺陽一さんという在ローマバチカン日本大使館・大使付き料理長をしていた方が恵比寿にだした自分のお店で賄いとして出しているポヴェリエッロというシンプルなパスタ。一流シェフの賄い料理を特集した料理の本でお見かけして、コピーをとっておいたのだ。具はペコリーノチーズと卵だけ。ベーコンのないカルボナーラといったところ。ポヴェリエッロの意味は「貧乏人のパスタ」らしいが、食事の8割がたはヴェーガンのわたしの日常食の中ではずば抜けてコッテリ・ガッツリ系で、お肉を食べる人ならば焼肉とかに位置づけられるものだろう。何よりたんぱく質が豊富でかなりの贅沢にあたる。1年に1度くらいしか作らないが、それでも確かに毎年絶対食べたくなる。食べると決めた日は日中の食事を控え目にして、夜にはかなりの空腹を感じるように備える。シンプルなレシピなだけにパスタの茹で方から卵の焼き方までちゃんと指導している。パスタの塩加減はお吸い物よりちょっとしょっぱいと感じるくらいにする。昨年″辞めた習慣″の一つに″パスタの茹で汁に塩を入れること″というのがある。物心ついた時から当たり前のようにやっていたが、ラジオでピストン西沢さんが言っていたのだ。
「オレはね、パスタ茹でる時には塩入れないの。もったいないから」
ふと考えた。塩を入れずに茹でたパスタと後から塩味を付けたパスタを目の前に出されたらどちらがどちらと当てることが出来るほどわたしの舌は敏感だろうか。まったくもって自信がない。違いがわからないなら必要がないではないか。
それ以来塩味は後から付けているが、それで″どうもパスタの味がキマラない″と感じたことはない。
ともあれ、先生によれば塩水で茹でないと味がぼやけるとのことなので、今回は美味しくなるおまじないだと思って指導通りに塩を入れた。フライパンにたっぷりのオリーブオイルを熱して、卵を二つ器に割入れてから滑らせるようにフライパンに流し込む。ふちがカリカリになったら(黄身はかなり生)一つを取り出して、茹であがったパスタをそこに入れて、火を止め目玉焼きをほぐしながら絡めて、摩り下ろしたチーズ(ペコリーノはなかったので、フランスで買ってきたグラナ・パダーノを使った)と粗挽きのブラックペッパーをたっぷり振って、塩で味を調える。最後にもう一つの卵を上に乗せて完成。残念ながらこの写真からその美味しさは伝わりそうもないが、これは絶品。大満足で、食後のコーヒーを啜りながら思うことは、この後当分は粗食(素食)でいい、ということ。