My life as a cat
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2014年11月25日(火) Honfleur





















ここからは一人旅。パリの北西に位置する静かなノルマンディの港町オンフルールへ向かった。過去にはイングランドに占領されたり、数々の探検家をこの港から送り出したりした。カナダのケベックの街を築いたのもこのひとつの探検隊だった。だが、船着き場として掘って作られた港には限界があり、大きな船を受け入れることができず、さほど町が繁栄することもなかった。それが幸いして過去のまま見捨てられた黒塗りの住居と新しいカラフルな住居が共存するユニークな景観となり、やがて画家達に見初められ描かれるようになった。今ではノルマンディのひとつの見どころとなっている。

まずはサンラザール駅から電車で2時間ほど北西に向かう。2等席でも充分快適で、カフェのごとくゆったり過ごすことができる。車窓から見える景色はほぼ牧草地と葉の落ちた裸の糸杉の木々に尽きる。

途中でバスに乗り換えて30分程でオンフルールに到着する。電車もバスも本数が少ないので乗り継ぎがよくないと日帰りはきつい。天気も小雨が振っているしで、錆びれた港町には観光客もほぼなく余計寒く感じられた。バスを降りるとすぐに立派なツーリストインフォメーションがあるので、そこで見どころと地図を入手して港の周りを歩いた。こんな季節外れで周囲を歩く人がいなくとも土産屋やレストランはちゃんと営業していた。

港の周りのレストランは観光客向けで味など期待できないのではないかと勘繰ったが、かといってそこを離れたところで何かがあるわけではなさそうなので、そのうちのひとつに入った。




ノルマンディの名物といえば、チーズや塩キャラメル、シードルにガレットらしいが、ここは港町。″Sea food salad"とお店のお姉さんが英語で言ったのを前菜に頼んでみた。でてきたものはイメージと違ったが、さっと火を通したシーフードにたっぷりとレモンを絞り、アリオリソースでいただく。これが美味しくないわけがない!













メインは"Mussel soup"とお姉さんが呼んだムール貝をブランデー入りのクリームで煮たもの。玉ねぎも隠し味に入っている。これにカリッと揚がったフレンチフライが付いてきた。食べるのに時間がかかる。これは居酒屋などで誰かとお喋りに耽りながらゆっくり食べたい。ひとり身としてはひたすら貝を舐めるという行為が面倒になってきた。味としてはこれまた美味しくないわけがないというシンプルさなのだが、個人的にはムール貝はトマトソースのほうが好きだな。

食事を終えたらもう日暮れ時。空も重く寒々しくて人恋しくなってきた。からりと晴れた夏の午後に来たならば、最高に良い風の吹いているに違いない。港のテラスできりりと冷えた白ワインでシーフードを堪能したらどんなにいいか。

人影のないあまりにも静かな町を一週して、パリに戻ろうとバスを待っていると、行きのバスの中で色々手助けしてくれたスペインからの女の子達もいた。売店で買った黄色い缶に入った飴(と思って買った)を掌に数粒出すと、真っ黒な切ったゴムのようなものが出てきた。口に入れて思わず声をあげた。

「ブェー!まずい!」

スペインガールズ達はわたしを見てくすくすと笑った。

「リコリスっていうスペインの飴だよ」

あぁ一応食べ物だったのね。間違って口にいれたかと思ったわ。リラックス効果があるとかいうけど、こんな激しい苦さじゃ落ち着かないねぇ、と思ったり。

電車に乗り換えようとすると遅延している。ベンチで隣に座っていてたまたま話した美しい女性はこの辺りの市の市長だという。へぇ、市長までこの美しさか。フランス人男性はほぼ賛成しないが(カミーユ君もブェー!と言っていた。わたしとリコリス飴の関係と同じのようだ)、フランス人女性は世界一美しいと思う。


Michelina |MAIL