My life as a cat DiaryINDEX|past|will
「森崎書店の日々」という映画を観た。失恋したいたってフツウの女の子が、古本の町・神保町で暮らすことになって、その町と人々のあたたかさと本の中の先人の言葉などによって傷を癒していくというような、淡々とした展開の静かな映画だった。映画全体の基調色は"生成り"で、登場人物の洋服やら部屋のインテリアも、陽に焼けた古本の色である生成りと融和するような色合いになっていて、視覚的にもほっと落ち着いて観られるものだった。お互いに懸命に頑張って、それでもうまくいかなかった挙句の失恋というのは、辛くても悪い後味を残さない。だから諦めた途端、あっさり歩き出せる(女はね、少なくとも)。でも一方的にもて遊ばれたみたいな失恋は、その苦い後味が消えるまでなかなか一歩を踏み出せないものなのかもね。まったく読書しなかった女の子が、古本屋を手伝うことになって、次第に読書好きになっていく姿は好もしい。本はいつでも色んなことを教えてくれて、生きる道しるべを示してくれる。わたしの人生もいつも本に支えられてきた。古本って買い取りも販売も二束三文みたいな値段しかつかないものばかり。でも、みんなやっぱり本には書いた人の魂が宿ってるみたいで、捨てにくいから古本屋にだす。それをまた売って魂を生かしてくれる人がいるってありがたいことだ。古本屋なんて本当お金の匂いのしない商売だ。好きという気持ちだけでしかなかなか成り立たない。映画の中で、本好きのおじさんがでてきて、奥さんが捨てただの、捨てたからまた買えるだのという会話がでてきて、あぁ、これって"本好きの凡人"に共通する尽きない問題よねぇ、と苦笑した。この映画、静かな中にもほろ苦くて、あたたかい、不安で、でも希望がある、そんな揺れ動く色んな感情が詰まっていて、わたしの春の気持ちにしっくり染み入ってしまった。
Michelina
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