My life as a cat
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2013年03月26日(火) 遥かな町へ

















「遥かな町へ」というフランス映画を観た。家族とパリに暮らすトマという中年の漫画家が、ある日電車を間違えて生まれ育った町にたどり着いてしまう。山の麓の小さな田舎町は美しいながらも過疎化が著しく、商店街はぱったりと戸を閉めて、彼が子供の頃はまだ活気ずいていたその面影も消えかけている。母のお墓を訪れた彼はそこで気を失ってしまう。気付くと、トマは心は中年のまま子供の頃にタイムスリップしていた。トマは甘酸っぱい初恋や幸せな両親との時間を丁寧に辿り直す。そして37歳の誕生祝いの夜に散歩にでるようにでかけて二度も戻らなかった父親を今度こそは引き止めようとする。しかし、同時に自分がその時の父親と同じような年にさしかかったからこそ、その心情も理解できてしまう。トマは結局父親の心情を察してその後家族にふりかかる不運を免れることを諦めた。子供の頃の時間を今、この心情で辿り直したらまったく自分のストーリーは違うものとなっていくのでしょうね、そんな風に思いを巡らせながら観た。この映画、しみじみと味わい深く、登場人物がみんな自らの人生に真剣に取り組んでいるのが読み取れるのがよかった。

しかし、トマのお父さんの寡黙さや家族に対するドライな態度がフランス人らしくなくて、お母さんも妙に甲斐甲斐しく家事に専念する主婦だし、その空気が「愛と個人主義の国」のイメージに結びつかず、本当はドイツ人じゃないのかしら?などと勝手な想像をしたのだが、後からこの映画の原作が日本のコミックだと知って、納得した。

こんな映画を観て、町にでてみればまぶしいくらい桜がきれいに開花している。ふと春風に乗って、"遥かな町へ"行ってみたくなってしまうね。


Michelina |MAIL