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2012年10月18日(木) |
ブラティスラヴァ世界絵本原画展 |
共産国時代のチェコスロバキアではじまり、現在はスロバキアが主催しているこの展覧会は、世界の絵本作家の完成度の高い作品が見られるというので(実際に出版されているものしか出品できない)、千葉市美術館まで足を運んだ。ここは初めて訪れたのだが、古風な雰囲気のとても落ち着く良い美術館だ。
これが想像をはるかに上回る充実ぶりで、内容の濃い面白い展覧会だった。原画が数点壁にかけられていて、その横には実際に出版された絵本が手に取って見られるようになっている。日本語に翻訳されたものはほんの数点だったが、絵を見ているだけでも十分楽しめる。日本人作家ではいまいあやのさんの「くつやのねこ」が入選したそうで、貧しい靴屋の主人と猫が力を合わせて生きるすべを見つけていくストーリーで、心優しいだけのような靴屋の主人に対し、猫がやり手で主導権を握っているのが面白い。わたしの心に強く響いたのはフランス人作家の"Le Surprise"という文字の無い絵本だった。絵の中に多くのストーリーを読み取ることができる。それはひとりの女性と愛猫の物語だった。だって、もうそれだけでぐっと感情移入してしまうよ、だれかさんみたいだもの。猫はいつもひとりで家で待っている。暗くなると女性が帰宅する。猫は喜んで玄関へ行き出迎える。寝食を共にして、つつましい日々のルーティンがある。そんな暮らしに変化が起きる。男性が女性の家を訪れるようになり、やがて女性が身ごもる。おなかが大きく大きく膨らんでいく。環境の変化に敏感な猫は家を出て行ってしまう。女性は悲嘆に暮れるが、やがて子供が誕生した。赤ん坊とリビングにいると、戸口で猫の鳴き声がした。ドアを開けるとそこには2匹の子猫をつれた愛猫がいたのだった。静かな女性と愛猫の暮らしは一揆ににぎやかになった、という話。わたしはいなくなった愛猫を探し歩いた不安な夜を思い出したりして涙がでそうになった。猫って本当に不思議な存在。テレビを見ててもパソコンに向かっててもシャワーを浴びててもいつも周囲でうろちょろしてるかと思えば、ある日突然どこかに隠れたりして不安にさせたりする。恋愛の駆け引きをする賢い女みたいだ。ガサガサ遊んでる時は呼べば喜んで走ってきたりするくせに、こちらが必死で探し回っている時はどんなに呼んでもそっと息を潜めて物音ひとつ立てない。だから見つけた時は嬉しくておやつをはずんでしまったりする。まんまと駆け引きに乗せられた気分だ。犬はそんなことしないもの。
日本の歴史的な古い絵本の展示もあった。明治時代の絵本はあまりカラフルではないが、すでに飛び出す絵本のようなものがあったというのは驚きだ。絵の中の扉をめくると中に妖怪が潜んでたり、ストーリーはぬるりと湿っぽい感じがうけたのだろうか。それが大正時代のものになると一気にカラフルになって、ただただから明るい雰囲気なのだ。昭和になると、今度はアニメチックになり、大人は楽しめないような幼稚な雰囲気のものになる。この頃になると今でいう3Dメガネのようなもので見ると立体的に見える絵本などもでてくる。こういうのは子供の頃見た記憶があるな。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展で入選した絵本は日本語で出版されていないものはその場で購入できないのが残念だった。買って帰って夜な夜なベッドの中で眺めたい魅力的な絵本がたくさんあったのに。