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アマゾンで高い評価を受けいていた美輪明宏さんの「人生ノート」を読んだ。期待が大きかっただけにがっかりだ。高貴な美意識と物事に対する根拠の薄い思い込みの激しさは典型的おかま節であった(おかまというのか知らないが)。おかまの美意識はそんじゃそこらの女性よりよほど高い。さすが、「女でいること」に本物の女性たちより何倍も努力を要しただけあると思わせてくれる。この本も出だしの美に関しての部分はなかなかよかった。しかし、社会を語らせるとたちまち偏見の世界に入ってしまう。例えば、フランスについて。
「エセヒューマニスト達の浅知恵で受け皿も用意せずに移民を受け入れた結果、職につけない移民達が町に溢れ盗みを働くようになって治安が悪化した。危険だからパリの人々はおしゃれして外出できなくなった」
とか、
「音楽はロックとニューミュージックだけになった・・・・そうしたら世界中のひとが憧れていたフランスらしさがなくなってミニアメリカのようになってしまった」
とか、ちょっと極端じゃないのかと思わずにいられない。フランス人がアメリカを目指しているなんて想像もつかない話だ。近代的なビルを建てるとか新しい音楽を聴くこと=アメリカ化とは呼ばないだろう。それにいまだにまともな英語をしゃべるフランス人など見たことがない。
出産についてこんなことも書いている。
「子供を産んで幸せになるというのは錯覚だ。みんな子供が欲しいわ、というけれど子供はウンチをして夜鳴きして、教育を与えて・・・そういうことまで考えていない。ペットをかわいがるくらいにしか思っていない・・・楽しめるのはせいぜい20年であとはよその人になる。ところが自分が年をとったら下の世話をしてもらうつもりで産んでいる人が多い・・・」
そうだろうか。子供を産んで育てる大変さを想像しない親がいるだろうか。それでも産む。その大変さよりもよほど大きな幸せをもらえるだろう。そう思わない親がどれだけいるだろうか。20年楽しんで、子供が新しい家族を作っても依然親は親だ。介護してほしい一心で子供を産む親がいるだろうか。介護は子育て以上に大変だろう。しかし、親の介護を投げ出す子供がどれだけいるだろうか。
20代前半くらいの人なら新しいアイディアを得ることができるかもしれないが、わたしは素直にうなずくには経験を積み過ぎている。