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2012年08月25日(土) |
キッチンが走る−北海道知床 |
暑い日は猫も人間も腹を出して寝るのがいいようだ。
好きでよく見るテレビ番組のひとつ「キッチンが走る」。キッチンのついたワゴンで杉浦太陽君と料理人(一流の人ばかりだ)が旅をして、その地元で取れる新鮮な食材を使って料理し、その生産者達を招いて食べてもらうのだ。良い食材は焼いて塩をかけただけとか、醤油をたらしただけとか、そういうシンプルに調理するのが一番うまい。とはいえ、いつも嫌になるほど自分の生産する食材が食卓に乗っているのだろう生産者達には一流料理人の手にかかった料理というのは真新しくて面白いに違いない。
今週は北海道知床スペシャルだった。自然と美味しいものをこよなく愛するわたしには憧れの地だ。料理人はフレンチの三國清三と中華の陳健一だ。食材を求めてワゴンは走る。道中では野生のシカやキツネにもでくわす。この番組の好きなところは真剣に物作りに励む人々が次々にでてくることだ。真剣に作られた食材を真剣に調理する料理人。その過程の厳しさや難しさを乗り越えて完成したものを和気藹々とみんなで囲んで食すなんて、とてもすばらしい構成だと思う。今回でていた羅臼昆布を作る過程など、なんとも過酷な重労働で驚いた。羅臼昆布は3mくらいで重さ10kgくらいあるのだが、それを小さな船に乗ってお父さんが一人で引き上げにいくのだ。そして漁から戻るとお母さんと二人で洗う。それを今度は乾かして、室内に吊るし、そしてまた夜露にさらすため夜中に海岸に出す。この昆布を作るシーズン、お父さんは夜中の2時に起きて、寝るのは夜の9時。そんな生活を1ヶ月くらい続けなければならず5kgくらい落ちるのだそうだ。料理の出汁に使う昆布の値がはる理由がよくわかった。
カラフト・マスの漁をしている人々も印象的だった。知床半島の川で生まれて海へ泳ぎ出たカラフト・マスが産卵のために再び川に遡上する時に網をしかけて捕まえるのだ。個人的には、鮭もそうだが、おなかに卵を抱え、流れに逆らって懸命に遡上する魚を捕まえるというのがむごいことのように思う。とはいえ、感情とは別に人間が魚を食すということは単なる自然の循環だと受け止めている。この漁をしている人々が漁の合間にカラフト・マスと野菜を煮込んで味噌で味付けした鍋を作っていた。出汁は白子から取る。三國もそこに混じって鍋を食べる。
「これは脂のキメが細かくて美味しいね」
と料理人らしいコメントをすると漁師がこう返す。
「海で食べるからうまいんだべ」
あぁ、この人達は本当の人生の愉しみ方を知っているのでしょう。
いつかこんなワゴンの旅にでる。わたしの夢のひとつだ。