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チャン・イーモウ監督の古い作品。この監督の作品はいくつか観たけれど、これといって心に残るものがない。ただひとつ覚えているのは、かつてボーイフレンドでベストフレンドだった男の子と前売りチケットを買って、「初恋のきた道」を観に映画館へ行くと、隣ではウォン・カーワイ監督の「花様年華」が上映されていた。そこが焦点ではないにしろ、不倫ものだ。"初恋"もいいけど、"不倫"も気になる。後ろ髪を惹かれながらも予定通り「初恋のきた道」を観た。終わった瞬間、顔を見合わせて、やっぱり"不倫"にすればよかったな、と同調したことだ(けっきょく後にDVDにて"不倫"を鑑賞。"初恋"と引き分けくらいだったのだが)。
でも、この映画「あの子を探して」思わず最後はほろりと泣いてしまった。出だしはあまりにも淡々としてて退屈。中国の僻地の貧しい村の学校に代理教師として送られてきたミンジはわずか13歳の女の子。村の学校の子供は小さな子からミンジとさほど変わらない子まで。ミンジの家もまた貧しく生活する為に働くしか選択肢がなかったのだろう。子供達と知能指数はほぼ変わらず、とても教育者のレベルではない。10歳を過ぎたような子供が日本でいう幼稚園並の教育を受けているのだからこの村が貧困のサークルから抜け出せるわけがない。教える意欲もないミンジと勉強熱心でもない子供達はただただのらりくらりと学校生活を送っていた。ところがある日、いたずら坊主でミンジを困らせていたホエクーがまだ11歳だというのに家が貧しいことを理由に街へ出稼ぎに送られてしまった。彼とひと悶着あった後だったせいなのか、ミンジは心配になり街へ彼を探しに行こうとするが、バス代がない。生徒達にお金を出してくれと頼むミンジ。それも日本ではありえない話だが、また生徒達も負けてはいない。ポケットに小銭があってもないと嘘をつく。家から持ってきて、とミンジが食い下がれば、生徒達もそんなお金あるわけないと言い返す。みんなでなんとかミンジのバス代を得ようとあれこれと知恵を振り絞る。ここで初めて彼ら全員の脳が活性化しはじめて、やっと授業らしくなってきた。みんなでレンガ運びをしたりしてなんとかバス代とジュースを2本買えるお金ができた。
「コーラを飲んでみたい!」
という生徒のリクエストでコーラを2本買ってみんなで一口ずつわけあう。なんという貧しさなのだろう。しかし、分け合うという行為が胸を打つ。可哀そうというよりも、純真で好奇心に満ち溢れた子供達が愛らしいと思えるシーンだった。コーラの感想は、「なんか変な味〜」だった。
結局バス乗り場まで行き、想定していたよりも高くてレンガ運びで稼いだ額では乗れないと分かった。次なる手はただ乗り。子供達の協力によりただ乗りは成功したものの、道中で切符がないと気付かれてバスから降ろされてしまう。ミンジは歩いて歩いて、最後はヒッチハイクしたトラクターに乗せられて街に辿り着き、ホエクーを探し始める。
この映画で面白いのは、街の人々の言動に中国人の感性がもろに顕れていることだ。ミンジが何かを訊ねれば、最後まで言い終わらないうちに言い返し始めるせっかちさ。ぶっきらぼうに「ア〜?」(日本語でいう、え?と同じらしいが)と聞き返すところとか。誰も彼もあかの他人のミンジを冷たくあしらう。しかし、ミンジもホエクーも案外食べ物は恵んでもらえたりしているのだ。やっぱり中国人にとって″食べること″ほど大事なことはないからなのだろうか。声が大きくがさつ。街に来ても、国際社会に通用するであろう洗練された人格を持っているのは、テレビ局の局長と美人アナウンサーだけであった。
僻地の貧困にあえぐ村とその教育問題をとりあげた実話ベースの映画らしいのだが、貧しいが故に″物を大切にする気持ち″がよく育つのだろう。貧困から学ぶことも多く、富裕と貧困のバランスというものをあらためて考えさせられる。