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日もすっかり落ちた頃、良き飲み仲間のフィルと銀座三越前で待ち合わせ。彼の友達のマルクスの会社の主催するパーティに顔を出すことになっていた。年間1/3くらいはビズトリップにでているから、今夜の再会も久々。お互いにラフなシャツ姿でしか会ったことがなかったから、目の前にバッチリスーツを着込んだフィルが現れた時、あまりにもの恰好良さに気絶しそうになった。あちらも会うなりフューと口を鳴らし、わたしの青のドレスを褒めてくれて、ちょっと女として見直してくれたらしかった(笑)。
パーティはなんだかつまらなくって、一杯飲んで、そうそうにフィルとマルクスと3人で抜け出すことにした。彼らは仕事がらみでない純粋な友達のようで、いつもスノッビーなヒルズ族のクライアントなどとつるんでくだらない高級な店で飲んでいるらしい彼らは、私生活では有楽町のガード下などで飲むことを好む。店に入るなり、このジャーマン男二人は"Prost!!"と高く掲げた一杯目のビールを勢いよく飲み干し、早々に2杯目を注文した。二人の飲みっぷりにこちらもなんだか楽しくなってきた。
フィルは初めて会った時からわたしにベタ惚れだった。といっても関係を持ちたいとかそういう類ではなくて、わたしの強くてインディペンデントで気骨のある生き方に惚れたのだという。彼は日本に長く、この国の良いところも沢山見つけているが、どうも典型的な日本人の女の子が苦手なようなのだ。
「彼女達は美しくセクシーに着飾っているから喋ってみたいとすごく興味をそそられる。でも喋ってみるとその意志の薄さと自信の無さにたちまちがっかりする。キャーとかワーとかやたら奇声をあげて、子供っぽさや無知を売り物にするのが気持ち悪いんだ。俺は経験豊富な大人の女と関係を持って結婚して子供を作りたいんだ。子供と子供を作る気はないんだよ」
隣でマルクスが強く同意している。
「俺は最近気付いたんだ。そんなふうにか弱く無知で経験の浅い女を装うことのできる女の子は計算高いんだよ。男に染められたいと望んでいるような女は本当の意味では男を必要としてないと思うな。本当に男を必要としているなら男を飼いならして絶対自分から離れさせないように言うことを聞かせるのだろうから」
その後も話題は女のメンタリティーを軸に彼らの育った東ドイツの共産主義思想までに転がった。"Du tunnel"というドイツ映画にでてきた女達を思い出した。男が何かを運んできてくれるのを待っているのではなく、男と対等に働き、危険を侵す。彼女達が時折ちらりと見せる女らしさと母性がどんなに魅力的にうつったことか。
彼らのほうが断然酔っていたが、この紳士達は駅まで送り届けなければ気がすまないというので、甘えることにした。わたしは自分の強さを適切に評価してくれる人がいるということがたまらなく嬉しかった。彼らはわたしを送り届けるとまだ飲むのだといって肩を組んで銀座の街に消えていった。