My life as a cat
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2011年10月22日(土) 賢明な妥協

友人からメールがきた。
「色々とありがとう。わたしももっと自分を大切にしようと思います。行ってきます!」
そうしてヨーロッパへ女一人旅へでかけていった。

数ヶ月前、彼女は日本へやってきたあるツーリストと恋に落ちてしまったのだ。はじめはあたかもお互いが運命と信じているかのような展開だった。しかし、日が経つごとに、どうしたら一緒にいられるかと一生懸命悩む彼女とは裏腹に、その男がただ旅行中楽しみたいだけのようにわたしには聞こえてきたのだ。その予感は的中した。彼は悪い人間ではなさそうだけれど、簡単にコミットメントする文化にはなかったのだろう。わたしは、そういう感覚ではとても女性的またはアジア的というのだろうか、いい年した独身男性がコミットメントなしで女と付き合いたいなんて頭が弱いのではないか、などと思ってしまうが、そんな欧米人男性は少なくない。しかし、よくよく聞いてみると彼女はこんなことを何度も繰り返しているようなのだ。一人去ると、寂しさのあまりまたすぐに誰でもいいからすがりつきたい、というように男性を探して、節操なく妥協するからまたすぐにだめになっての繰り返しだ。精神のか弱い彼女があまりにも不憫で心配だった。ある日はこんなことを言ってわたしの気を滅入らせた。
「日本にいる外国人はバカばかり。でも妥協してバカと付き合うしかないのだろうか。」
そんな"バカ"な話があるわけない。わたしと彼女の"寂しさ"のメカニズムは違うのだろうか。わたしはひとりでいることよりも、誰かと一緒にいて、その人と心が通じないと感じることほど寂しいことはない。彼女はそれでも誰かと一緒にいたいのだろうか。
「ねぇ、あなたは綺麗だし、よく働いて、よく旅行して、話題も豊富で一緒にいてとても楽しい人だと思うよ。だからいつかあなたを誰よりも大切に思ってくれる人が現れるまで自分で自分を大切にしていかなければ、すごく勿体無いよ。」
と励まし続けたのだった。少しずつ落ち着きを取り戻した彼女は、ひとりの男の子の写真を見せてくれた。ネットで知り合ってメール交換しているだけの仲らしいのだが、何ヶ月も続いていて、そのうち実際に会ってみるつもりなのだと。メールだけでそんなに続くというのなら、お互いにパーソナリティを認めあっているのだろうし、ベッドに引きずりこむ意外に目的はないなんていう空っぽ男じゃないのだろうからいいんじゃないかな。

そして別の友人の結婚が決まった。一年前にその男性と交際を始めて、はじめは違和感ばかり訴えていたのだが、今となっては幸せの絶頂にいるようだ。この彼に会うまで、素直で従順なお嬢様タイプの彼女は、見た目が良く黒い魅力を持った男にひっかかっては、振り回され、泣かされ、最後は捨てられぼろぼろになるということを繰り返していたらしいので、性格も見た目も勤勉な会社員タイプで、健気に彼女だけをまっすぐ愛してくれる男性と付き合うようになって違和感を感じるのも無理はない。しかし一年交際を続けていく中で、"安心"をもらうことの心地よさをおぼえ、彼の退屈さや地味な見た目には目をつぶれるようになったということだ。彼女は本当にお人好しなところがあって、過去に彼女をボロボロにした男でさえも、"浮気ばかりして泣かされたけど、彼は不思議とお金が舞い込む強運の持ち主だった"とか、"お金に困って惨めだったけど、一緒にいると笑いが耐えなかった"とか、健気に何かしら良いところを摘み取って記憶に刻んでいるのが涙ぐましい。今となっては彼女を心底心配していたお母さんも、
「あなたはラッキーね。不誠実な男に振られ続けたおかげでこんな誠実で素敵な男性とめぐり合えたのだから」
と胸を撫で下ろしているのだそうだ。

"妥協"はどこまで許すべきかとたまに考えることがあったが、結局、"妥協"はそれをして、自分が今よりも確実に幸せになれる時だけすればいいということかな。


Michelina |MAIL