My life as a cat
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2011年04月10日(日) グアテマラの弟




















「甘苦い人生もポコアポコ(少しずつ)」

こんな言葉ひとつの響きすら、頑張り過ぎず、なんとかなるさと人生をてくてくと歩いていくグアテマラの人々の雰囲気を浮かび上がらせるようだ。この本は、片桐はいりさんに語られる、南米グアテマラに辿りついて、そのままグアテマラ人になってしまった弟を軸にした旅と家族についてのエッセイだ。長い長い話をいつもたった一行に凝縮してしまう口数の少ない弟、「美味しいごはんさえ作れれば、人生たいていの問題は解決できる」と母親に教わり、料理にだけは手を抜かない義妹、家事にあけくれいつも体を動かして働いていないと気の済まない気質の母親、そして、骨壺に収まってから初めてグアテマラへの旅行を果たした父親、決して「家族の固い絆」なんていうものを前面に押し出したりしていないのに、自然と描かれた家族の話はパズルのようにポコポコときれいに噛み合ってしまう。家族ってそんなもの。どこへいても、何年会わなくても、何かのきっかけでまた近づいたり離れたり、家族との赤い糸はどんなにか細くなっても決してプツリと切れてしまうものではない。飾り気なく気張らない文章がスーっと心に馴染んで、読んだ後は楽しかった旅と家族の記憶を呼び起こされて、じわりとあたたかくなるような本だった。

すっかり春めいた午後は朝からカチャカチャと作ったちらし寿司やら生春巻き、ケーキや果物を三段重に詰めて、ダミアンと桜の下でつついた。桜の木はどんな災難に見舞われようと毎年必ず花を咲かせる。なんて健気で忠実なんだろう。


Michelina |MAIL