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また暴風雨。憂鬱になりながら出社して、濡れてしまった足元を少し不快に思いながらコーヒーを入れにいったら上司とかち合った。先にどうぞ、と誘導したら"ありがとう"と言って自分のを入れてからわたしのも入れてくれた。"ありがとうございます"と言い返したらなんだかぽっと心が温かくなった。
雨が上がった夕方、ふと茂みから茶色の大きな野ウサギがの飛び出してくるのを目撃した。実家の周りは躊躇なく木を伐採してどんどんゴルフ場や道路ができて発展目覚しい。人生の半分はここに住んでいなかったし、将来も住む気はないにしろ、それでもほんの一時の楽しかった思い出の場所があって、でもそれは一住民の感情と裏腹に消えていく。自給自足に近い暮らしをしていた田舎の人々が現金収入を得ることができるようになると、その子供達はせっせと新しくできたコンビニに通い、家で摂れた米や野菜から離れていく。病気になったら医者にかかればいい。便利さと引き換えに人間が横着になって心が脂肪だらけになるみたいだ。北野武がこんなことを言っていた。
「おなかが空いて何か食べようと食堂の前まで来て、そこでポケットの中にいくらあるか確かめなくて済むくらいだったらいいな。」
わたしもそう思う。それくらいでいい。自然を切り売りしてお金に換えてそれが豊かさなのだろうか。子供の頃、夏になると光を放ちながらフワフワと浮遊してわたしをときめかせた蛍はめっきり姿を見せなくなった。思いがけず野生動物に遭遇するとあぁ、まだ捨てたもんじゃないと安堵する。この町に関して発展がわたしにもたらしたものは排気ガスでしかない。発展と自然が共生できる道は考えられないのだろうか。