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バスでシティから遠く離れたプリズンへ行くことにした。マーヴはバスなんかで来ないほうがいいよ、と心配そうに言っていたけれど、第一に彼に会いたかったし、見たことのない所へバスを乗り継いで行ってみるのもいいかと軽く見ていた。
ハイウェイを突っ走るバスはがらがらだったけれど、数人の乗客はこちらで"Trash"と表現されるような風貌の人ばかりだった。30分走ってその町に到着。そこからはパブリックバスはないからプリズンバスに乗る。乗り継ぎまでの時間にランチを摂った。太った人やちょっと悪そうな人が多い。典型的な田舎町だ。ショッピングセンターのトイレに入るのもこわかった。しかし、もっとショックを受けたのはプリズンバスだった。もちろん行き先など表示されていない。聞いておいた特長と同じのを見つけて腕一面にタトゥの入ったドライバーに尋ねたらやはりそれだった。乗客はアボリジニの女の人ばかりで、みんな顔見知りらしい。近所の主婦とランチにでも出かけるように楽しそうにわいわい騒いでいる。白人のワルは本物、アボリジニのワルは軽犯罪の常連とマーヴが言っていたように、彼女達にとっては旦那がプリズンにいるのが日常なのかもしれなかった。本当に遠くへきてしまったと心細くなった。
毎日わたしに会えなくなってちょっと落胆気味のマーヴを励ますつもりだったのに、ぽろぽろと泣いてしまった。彼はいつもわたしが泣くと、慰めもせず、隣でただ一緒に悲しんで目を潤ませるのだった。なんて頼りない人!と最初はそう思ったけれど、長い長い睫毛を伏せて悲しむ純真無垢な顔を見ると、自分がとんでもない悪いことをしたのではないかという気になって、ぴたりと涙が止まってしまうのだった。
「あなたは悪いことなどしていないと信じている。けれどこの問題を招いたのはあなた自身であることにはかわりないのだから、自分を見つめなおさないとだめよ。」
と言って気付いた。そしてそういう人と一緒にいる状況を招いたのもわたし自身なのだ。さようならとさっさと去ったところでもっと素晴らしい人生が待っていただろうかと考えたらやはりこれが正しかったと思う。受け入れるしかないのだ。そう考えたら楽になった。小学校の遠足の帰りのような気分でぐっすり眠りながらシティへ戻るバスに揺られた。